9月6日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「パンは、鉄砲と一緒に伝来した。」
――『パン史』
「いい映画は、素敵な所へ連れて行ってくれる。」
――『靴職人と魔法のミシン』『シェイプオブウォーター』
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
日本人は歴史的にお米を主食としてきました。
それが今や、すっかりパンに凌駕されています。
その背景にあるのは「多様性」なのかもしれません。
パンは、古代メソポタミアから生まれ、エジプトに。
地中海を越えて、イタリアでピッツァ、アメリカでピザに。
インドでナン、日本では、菓子パンを生み出しました。
多くの人の手で、「多様性」をもたらされてきたのです。
パンの「強さ」は、ここにあるのかもしれません。
多様性の強み、中谷さんから教わりました。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「テーマとキャラクターで、歴史が息づく。
点と点が繋がってくる。長年の謎が解ける興奮。
謎解きをやるのが、大人の勉強。」と中谷さん。
そのためには、勉強。知識が「点」になるからです。
今回の切り口は「パン」。その発祥から発展、
関係した人物の物語から、歴史的意義まで。
パンをめぐる多様な展開から学ぶもの大です。
「古代メソポタミアでは、小麦粉を水でこね、
焼いただけのパンだった。それがエジプトに伝わり、
ビール酵母の働きを発見し、発酵パンが生まれた。
それがインドに渡って、ナンになり、
地中海を渡って、ピザになった。」と中谷さん。
技術の伝播は、食文化にそのまま反映されていきました。
やがて日本では、「菓子パン」として花開きます。
日本のパン文化に貢献したのは、幕末の洋学者でした。
たとえば、韮山反射炉建設で知られる江川太郎左衛門。
「江川太郎左衛門は、軍用パンを試作していた。
アヘン戦争ショック。列強が来るのも時間の問題。
戦争に備えて、兵糧としてのパンに、彼は着目した。
米は腐るが、パンは保存がきく。」と中谷さん。
保存が効く。これもパンの強みとなったのですね。
「パン消費量の1位は京都。2位は神戸。
観光客向けじゃないから、手抜きができない。
京都には喫茶店も多いから、レベルが高い。
神戸では、米騒動のときに米屋が襲撃された。
お米がなくなって、パン食が定着した。」と中谷さん。
パン消費量というデータから、街の一面が見えてきます。
こういう学びなら、いくらでも探究できますね。
パンといえば木村屋。明治初期、東京で創業されました。
明治7年、初代・木村安兵衛が酒種あんぱんを考案。
山岡鉄舟から献上され、明治天皇のお気に入りに。
ビスケットをヒントに、3代目がジャムパンを考案。
「経営危機のとき、パン職人のクビを切った。
ところが失敗。すぐに従来のやり方に回帰して、V字回復。
職人気質と新商品開発が、木村屋のお家芸。」と中谷さん。
伝統は、チャレンジ精神と職人根性が支えているのですね。
エジプトからイタリアにもたらされた「ピッツァ」は、
大西洋を渡って「ピザ」となりました。
「ピザはアメリカ料理。イタリア移民が持ち込んだ。
ピザは、具を味わう。ピッツァは、別物。皮を味わう。
ピッツァは、24時間発酵させて、石窯で焼いたものだけ。
ピザカッターは使わない。1枚丸ごと食べる。」と中谷さん。
同系統の料理にも、それぞれ、お国柄が出ますね。
「パンは、生地の味。フランスパンのクープ。
釜伸びをよくして、形を整えて、火通りをよくする。
だけど、それだけじゃない。大事なのは、噛みごたえ。
噛みながら、混ぜていく。流し込んではだめ。
パンは、アミラーゼで味わう。お米と同じ。」と中谷さん。
日本では、パンの耳を嫌う傾向がありますが、
パンの味わいポイントは「耳」なのかもしれませんね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
伏線回収は、映画鑑賞の快感の最たるものです。
でも、伏線に気づけるかどうかは、観る人の力量次第。
主人公・イライザは朝からバスタブ。その訳は?
首筋の3本の傷。その意味するものは?
アイマスクして眠る。その理由は?
「イライザ」という名前の背景にあるものは?
「バスの窓に伝う水滴2つが、1つになっていく。
ゆで卵をあげているシーンが、エッチ。」と中谷さん。
一般人にとって何気ないシーンに、食い入る中谷さん。
その伏線発見力は、量稽古のたまものなのですね。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
中谷さんお気に入り俳優の一人、アダム・サンドラー。
別ナカ180で紹介した「もしも昨日が選べたら」にも主演。
アダム・サンドラーの、今回の役どころは靴職人マックス。
ニューヨークの下町で、しがない靴修理店を営む4代目店主。
お父さんは謎の失踪。お母さんはいくらかぼんやりし始めた。
横柄なお客にしいたげられ、暮らしぶりもよくない。
そんなマックスの人生を変えたのは、一台のミシンでした。
ミシンが故障して、倉庫で見つけた先祖伝来のミシン。
そのミシンで修理した靴を履くと、持ち主に変身できる。
最初は度肝を抜かれたマックスですが、しだいに――
「女性に変身したと思ったら、ニューハーフだった。
変身して食い逃げしたり、高級車を盗んだり、
イケメンになりすまし、美女の家に入り込んだり。
男女、年齢、人種、嗜好。多様性をが表現されている。」
靴を通じた多様性、わかりやすい描写が見事です。
魔法のミシンは、マックスの人生を変えました。
「負け組」だった彼は、新しい世界を切り開いたのです。
「いい靴を履くと、ちゃんとしたくなる。
立ち振舞がよくなるし、前向きに行動的になる。
いい靴は、素敵な場所に連れて行ってくれる。」と中谷さん。
いい靴は、魔法をかけてくれるのですね。
「シェイプ・オブ・ウォーター」は、
2017年、ヴェネツィア国際映画祭ので金獅子賞を受賞。
ギレルモ・デル・トロ監督は、アカデミー監督賞を受賞。
一方、暴力描写や自慰行為など、刺激の強い描写があるため、
日本での公開では様々な制約が。そんな話題作です。
「従来のハリウッド映画ではない。ヨーロッパ的。」と中谷さん。
痛快さはありませんが、余韻に浸れる名作です。
主人公・イライザは、発話障害の中年女性。
アパートでひとり暮らし。清掃員の仕事に就いています。
「冒頭、起きてお風呂に入ったイライザが、いきなりオナニー。
音楽はロマンチック。え、どういう映画?
売れないゲイの老画家。陽気だけど愚痴っぽい仕事仲間。
威張り散らしているが、家では孤独を感じる嫌な上司。
「孤独な人たちが、どう繋がるかがテーマ。」と中谷さん。
これからの社会を生きる知恵が見い出せそうです。
老画家の冷蔵庫に敷き詰められた緑色のパイ。
美味しくもないパイを買うのは、なぜでしょうか。
ある日、店のウェイターに、気配を漂わせてしまったら…
「レストランに入ってきた黒人カップルを追っ払う。
このウェイターは、多様性のない人の典型。」と中谷さん。
「靴職人と魔法のミシン」でも、多様性はテーマの一つ。
「多様性」は、現代映画を観る上で欠かせない視点ですね。
これほど、中谷さんの観察力に脱帽した映画はありません。
イライザは朝からバスタブ。その理由は?
首筋の3本の傷の意味するものは?
アイマスクして寝ていた訳は?
「イライザ」という名前の背景にあるものは?
「バスの窓に伝う水滴2つが、1つになっていく。
ゆで卵をあげているシーンが、エッチ。」と中谷さん。
このシーンを、あなたはどう読み解きますか?
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美