1月4日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「銀座は、人を大人に育てる。」
――『銀座の粋人』
「一目惚れを、信じよう。」
――『変態仮面』『ツナグ』
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
銀座「月光荘画材店」の創業者・橋本兵藏。
大正時代、東京に出てきて、書生をしていました。
向かいの家の与謝野鉄幹・晶子夫妻に可愛がられて、
出入りするうちに、洋画家たちの嘆きが耳に入ります。
「フランス製の絵の具が手に入らない……」
兵藏は、この人達のために画材屋をやろうと決意。
「銀座は、日本文化の入り口。大人の入り口。
入り口を間違えると、終わり。」と中谷さん。
大人への入り口、中谷さんから伺いました。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「銀座の店には、あるじがいる。旦那がいる。
大旦那がいる。「父です」と出てくるのが銀座。
書き入れ時の日曜日でも、家庭のために店を閉める。
顧客満足ではなく、従業員含めての家族満足を最優先。
人に会いに行くのが銀座という街。」と中谷さん。
そう、銀座は「商店街」だったのです。
全国の商店街が「○○銀座」と名乗っているのも、
じつは、このあたりが理由なのかもしれませんね。
銀座は「商店街」。これは、驚きの指摘です。
「チェーン展開しない。ポイントカードもない。
入れるかわからない、開いているかもわからない。
ちょっと立ち寄って、近況報告や昔語りをして帰る。
銀座は予約して行く街じゃない。ぶらっと行く。
これが本来の銀ブラ。アポなしが基本。」と中谷さん。
「銀座」を楽しむために、常連になることですね。
「予約してくる人は、長居する。写真を撮るから。
常連さんは、長居しない。混んでいたら、またにする。
常連さんは、流す店を持っている。」と中谷さん。
流す店があるというのは、地元の人ならではのもの。
銀座に行くか、銀座に暮らすかで、行動は違ってきます。
銀座の住人としてのマナーを身につけたいですね。
「銀座には、空がある。空がなくなると、街は死ぬ。
空中権を、銀座の粋人たちは売らなかった。」
このくだりで印象的だったのは、世代を超えた教え。
銀座「煉瓦亭」4代目の木田浩一朗さんは、
商売をお祖父様から教わったということです。
創業者の曾祖父さんは、上野の万国博覧会を見たときに、
西洋料理に開眼。さらに「これからは銀座だ」と確信。
こうした代々の物語も、銀座ならではの味わいですね。
シベリアに抑留された、銀座ボーグの当時のご主人。
職業を尋ねられ、帽子職人ではなく散髪屋と答えました。
「機転が利くし、職人だから器用にやってしまう。
早く帰国するために、赤化されたふりもした。
職人は頑固というけれど、銀座は違う。サービスマン。
ブレがないから、融通がきく。」と中谷さん。
職人技とサービス精神が融合したのが「銀座」なのですね。
「ライターにしても、タクシーの運転手さんにしても、
技術より会話。会話力のある人は、タメ口。
いきなり懐に入る。へたにまねすると、失礼になる。
お客様ではなく家族として遇するのが、銀座。」と中谷さん。
接待の真髄、それは家族待遇。
銀座での接待を通じて体得すべきは、家族待遇なのですね。
「たとえば、月光荘でポストカードを買うとする。
僕は、比較しない。最初に目についたものを手に取る。
入れ替えたものには、邪念が入っている。
覚悟、美意識、価値軸が問われている。」と中谷さん。
ちなみに、橋本兵臧は、与謝野晶子から、
「画材屋はおやめなさい。婦人下着をおやりなさい」
とたしなめられたそうです。でも、直感に従いました。
晶子の洞察も素晴らしいですが、兵藏の確信もすごい。
銀座にまつわる麗しいエピソードですね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
「愛される・愛する」では「愛される」ほうが得。
そんな損得勘定している方はいませんか。
「愛の力とは、愛される力ではない。愛する力。
愛されるは、苦しくない。脇役。
愛するほうが自由がある。」と中谷さん。
愛する人のために、心ならずもパンティをかぶる男。
愛する人のために、何年も待ち続けた男。
愛される人よりも、愛する人を目指したい。
人間的に成熟する方法、中谷さんから伺いました。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
1本目の映画は「HK/変態仮面」です。
パンティをかぶると、無双状態になる主人公。
「愛子ちゃん、どうか俺の戦う姿を見ないで欲しい」
「俺は正義の味方だが どうやら正義は俺の味方ではないらしい」
愛する女性のために戦う変態仮面の悲痛と滑稽。
「変態でなければ、人間としてつまらない。」と中谷さん。
「かっこよさ」を極めれば、変態に到達するのですね。
「好きなことを、偶然でするな」は、
「気合を入れて打ち込め」という比喩。
「ムチで叩かないで」は「叩いて」という願望。
「僕はただの変態じゃない。正義の変態だ」は、
自己の変態性に対するプライドの表れ。
「映画は、キャラ。セリフで、キャラが生まれる。」
筋よりもセリフ。中谷さんの真意がここに表れていますね。
どうせダメだから、やらない。これが常識人。
でも、変態は違います。変態は、
「もうだめだ。どうせだめなら、やってみる」
「ここで諦めたら、ただの変態になってしまう」
「変態仮面の言葉は、背中を押してくれる。」と中谷さん。
変態仮面という悲痛なヒーローの独白から、
ピンチへの立ち向かい方を学ぶことができますね。
「変態は、ストイック。本能ではなく、美意識。
使用価値ではない、独自の価値基準を持っている。
変態か変態でないかではなく、どんな変態か。
立派な変態か。どこに出しても恥ずかしくない変態か。
ストイックな変態かと自問する。」と中谷さん。
世間の厳しい風当たりを受けながら、おのれの道をゆく。
変態こそ、パーフェクトヒューマンなのかもしれません。
2本目の映画は、直木賞作家・辻村深月原作の「ツナグ」です。
松坂桃李扮する主人公・歩美は、高校2年生。
祖母のアイ子から、「ツナグ」の継承者として指名されます。
ツナグとは、生者と死者の橋渡しをする使者。
「大事なのは、どういう気持から出た行動か。」と中谷さん。
さまざまな「行動」の背後に伏せられた心の動き。
死者との語らいから、初めて見えてくる世界もあるのです。
突然、目の前からいなくなって早7年。
婚約者は、どこへ行ってしまったのだろうかと煩悶する男。
「愛の力とは、愛される力ではない。愛する力。
愛されるは、苦しくない。脇役。
愛するほうが自由がある。」と中谷さん。
愛されるほうが「お得」と考える人もいますが、
それは他人任せの人生。愛する人生を選びたいですね。
映画「ツナグ」、いい意味で、抑揚の少ない静かな作品でした。
「盛り上げない。どんでん返しがない。ひねらない。
ただ、淡々と積み重ねるだけ。描写されるのは、心。
小津安二郎映画にも通じる、日本の省く文化。
ストーリーが面白いと、逆に、心が離れていく。」
ハリウッド映画と対極をなす、日本の伝統的な映像文化。
日本人の精神文化を「ツナグ」で再認識したいですね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美