9月7日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「君と同じ作品が、好きだった。」
――『ヘレーネ』と『ミシア』
「優しくしてくれたことばかり、思い出す。」
――『噂のアゲメンに恋をした!』『振り子』
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
伝えたい気持ちが大量にありながら、口下手。
理想に胸を焦がし、その実現に向けて行動力しながら、常識はずれ。
それが「顔が近い男」ゴッホ。
よく知られているように、生前売れた絵はわずか1枚。
ゴッホの価値を見出したのは、ヘレーネ・クレラー=ミュラー。
「ヘレーネが、ゴッホの天才を発見した。」と中谷さん。
ココ・シャネルの天才を発見したミシア・セール。
「天才の発掘者」ともいうべき2人の女性。
「天才」の励まし方、中谷さんに伺いました。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「画家が売れるかどうかは、才能じゃない。
ピカソのように、自分で売り方を身につけた画家もいる。
ゴッホのように、売ってくれる人を得た画家もいる。
ただ、ゴッホは生前1枚しか売れなかった。」と中谷さん。
芸術志向の人が陥りやすいのは、才能主義。
いいものを創っていれば、売れるというのは誤解です。
売る技術までが問われているのが、アートの世界なのです。
ヘレーネ・クレラー=ミュラーは、大金持ちの令嬢。
実業家の夫・アントンの支援や美術家庭教師のブレマーの助言を得て、
ヘレーネは、アートの世界に魅了されていきます。
「結婚記念日に、アントンがヘレーネに贈ったのが『悲しむ老人』。
ジョークのつもりでプレゼントしたゴッホの絵に、ヘレーネは感動。
なにこれ! 素晴らしいとなった。」と中谷さん。
このゴッホ体験が、その後のコレクションにつながったのです。
何不自由ない生活を送るヘレーネにも、悩みはありました。
「孤独なゴッホに、自分の孤独を重ね合わせた。
相通じるものを感じた。波長がドンピシャで合った。
ゴッホは、伝えたい気持ちが大量にあった。
彼は絵の裏に手紙を書いた。絵が手紙だった。
ゴッホとヘレーネの文通が始まった。」と中谷さん。
一人のインフルエンサーで、ゴッホは蘇ったのです。
パリ万博、エッフェル塔の建設、そしてベル・エポック。
フランスは「良き時代、美しき時代」を迎えていました。
女性の地位が向上し、労働者の待遇が改善された時代。
そこに登場したのが、ミシア・セール。
芸術家のパトロンとして、パリで芸術サロンも主催しました。
「無名芸術家を応援した。評価より、応援で絵を買う。
そして、そのお礼としてミシアを描く。」と中谷さん。
ミシアは、まさにベル・エポックの「女神」だったのです。
作家・ポール・モランは、ミシアをこう評しています。
「天才の収集家で、彼らはすべてミシアを愛していた。
ミシアが会おうと思うには、才能を持たなくてはならない」
そんなミシア自身も天才で、芸術家一族の出身者。
「お父さんは、ポーランドの有名な彫刻家で美大教授。
お母さんは音楽一家の出で、有名なチェリストの娘だった。
お祖父さんから手ほどきを受けて、ピアノに親しみ、
リストの膝でベートーヴェンを弾いた。」と中谷さん。
天才は、天才との相互作用から生まれるのですね。
ピカソの「天才」は、その眼力にあったようです。
「才能あるライバルだらけ。ピカソはビクビクしていた。
ピカソは目利きだったから、ライバルの実力がわかる。
マティスに勝てないとわかると、すぐに絵を持ち帰った。
『売れているか、売れていないかだよ』と言いながら、
モディリアーニを一番評価していたのもピカソ。」と中谷さん。
ライバルの強みを知ることで、自分の強みを発見できるのですね。
ミシアの人生を語る上で欠かせないのが、ココ・シャネル。
「婚約者を亡くし、失意のココ・シャネルを支えたのがミシア。
シャネルが唯一リスペクトしていたのもミシア
『大丈夫、あなたは天才。あなたの時代が来る』
ミシアの言葉で、シャネルは勇気づけられた。」と中谷さん。
生涯にわたって、麗しい関係を気づいた二人。
シャネルのオードゥ・パルファム「ミシア」。
ここに、その麗しい関係が受け継がれています。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
映画の醍醐味、それは何といっても「会話」。
ウィットに富んだ切り返し。含蓄のある格言。
磨き抜かれたセリフは、映画ならではのものです。
でも同時に、セリフのない世界を味わえるのも映画。
「映画は、俳句。半分はつくる側、半分は観る側がつくる。
各自の解釈があって、それがいい。」と中谷さん。
セリフという制約がなくなるから、気持ちが通じる。
イマジネーションが広がる。「世界」を共有できる。
俳句としての映画の観方、中谷さんから伺いました。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
1本目のご紹介は「噂のアゲメンに恋をした!」です。
「冒頭でコードが決まる。約束事が必ずある。」と中谷さん。
その冒頭とは、子供たちの集まるホームパーティーの一幕。
その場で、主人公・チャーリーは、魔性の少女に魅入られて、
「一生幸せになれない呪い」をかけられてしまいます。
歯科医になったチャーリーは、どこに行ってもモテモテ。
でも、チャーリーは浮かない顔でした――
「チャーリーとセックスすると、次に運命の相手に出会う」
これが、チャーリーがかけられた呪いでした。
そのため、運命の相手との出会いを求める女性が、
日々押し寄せてきます。美女もいれば、そうでもない女性も。
時には、人助けのために、相手をつとめることも……
「モテモテ男は、生活がただれてくるんじゃなくて、
むしろ、ロマンチックに憧れる。」と中谷さん。
そんなとき、チャーリーの前に現れたのがキャムでした――
ヒロイン・キャムを演じるのは、ジェシカ・アルバ。
男性誌で「世界一セクシーな女性」に選ばれたこともあります。
「ジェシカ・アルバは、ゴリゴリのカトリック教徒。
映画の中で、ヌードやセックスシーンはダメ。」と中谷さん。
違和感のある設定。そして氾濫するセックスシーン……
正直なところ、抵抗感のぬぐえない映画でしたが、
キャムの存在が、本作をロマンチックなものにしてくれました。
2本目は「振り子」。お笑い芸人・鉄拳のパラパラ漫画です。
YouTubeで公開されていて、大きな反響を呼んでいます。
「『振り子』は、フランス映画的。
でも、カメラ目線でVサイン。映画の作法ではない。
見ている我々は誰だ? って、ヒヤッとする。
映画よりすごい。じっくり観た。」と中谷さん。
YouTubeでご覧いただけますので、ぜひ。
卒業式、そして校門。次のシーンは、アパートの2階。
「説明がいるところを、ワンカットで見せるのがすごい。
セリフが飛んでいるから、それぞれの耳に聞こえてしまう。
映画は、俳句。半分はつくる側、半分は観る側。
各自の解釈があって、それがいい。
無限の別解を与えてくれる。」と中谷さん。
言葉がないから、聞こえてくる言葉があるのですね。
「振り子」の反響は、全世界に及んでいます。
なかでも、イギリスのロックバンド・ミューズの
オフィシャルビデオに採用されたことは、よく知られています。v
「奥さんのお腹に、顔を埋めるシーン。
これだけで、わかるよね。世界中の人がわかる。
言葉がないから、国や文化を超える。」と中谷さん。
セリフのない世界を味わうのも映画の醍醐味なのですね。
鉄拳さんは、高校時代に漫画で入賞。でもあとが続かず断念。
その後、プロレスの世界に飛び込むものの、
レフェリーとしての採用と気付き、即退団。
俳優になろうと劇団に入るも、滑舌が悪いことで、すぐに退団。
お笑い芸人として人気が出るが、ライバルに圧倒され廃業を決意。
そんなときに、手掛けたパラパラ漫画が高い評価を得ました。
「3ヶ月で、1038枚描いた。まじめな人。」と中谷さん。
鉄拳さん自身の人生がパラパラ漫画的ですね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美