5月4日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「異世界を体験することで、関心を持とう。」
――『バンクシー』
「一人との出会いが、人生を変える。」
――『マジックマネー』『ラブ&ドラッグ』
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
「現代アートって意味不明…」「現代アートって胡散臭い…」
でもそれは、鑑賞法を知らないからかもしれません。
ジェフ・クーンズで「現代アートは、作家込みで作品。」、
マルセル・デュシャンで「基準をひっくり返すのが、アートの役割。」、
バンクシーで「絵でみせるのが、コンセプトワーク。」と語る中谷さん。
現代アートとは、じつはアートというより「物語」なのかもしれません。
現代アートが描く「物語」の読み解き方、中谷さんから伺いました。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
バルーンドッグ、ラビット、そしてパピー。
「炎上作家」との異名も持つジェフ・クーンズ。
作品のみならず、その私生活や思想に注目が集まっています。
「売れる、売れない。これは、うまいへたじゃない。
ここが、昔と違うところ。古典絵画に、思想はない。
思想、生き様、メッセージ、世界観。
現代アートは、作家本人込みで作品。」と中谷さん。
「作家」を作品を通じて味わうのが、現代アートなのですね。
ジェフ・クーンズはウォールストリートの金融マンでした。
「アートと株は、同じ原理。需要と供給。
最初に、アートの売り方を発明したのは、ピカソ。
ピカソほど、売り込みがうまい画家はいなかった。」と中谷さん。
でも、ピカソも、ムンクに相談するくらい悩んでいて、
いかにも悩んでいそうなムンクから、逆に励まされたそうです。
技術とマーケティングの二刀流で成り立つのが現代アートなのですね。
マルセル・デュシャン。現代アートを切り拓いた一人です。
便器にサインを施しただけの「泉」。
「L.H.O.O.G.」は「モナリザ」にいたずら書きしたような作品です。
デュシャンは「アートとは、思考を楽しむ手段」と定義しました。
ですから「なんじゃこりゃ?」で始まるのは正解なのです。
「基準をひっくり返すのが、アートの役割。」と中谷さん。
「基準」に囚われることで、精神の闊達さは失われます。
アートとの対話は、精神のみずみずしさを与えてくれるのですね。
バンクシーといえば「花束を投げる男」。
パレスチナの、とあるガソリンスタンドの壁に描かれた作品です。
手に持っているのは、火炎瓶ではなく花束。
「イスラエルへの警告。空爆したら、花束を投げるぞ、と。
ふだん見向きもされない報道関係者も集まってくる。
言葉より絵。絵でみせていくのが、コンセプトワーク。」
人の心を打つのは、百の言葉より1枚の絵、なのですね。
マーケティングのプロフェッショナルの中谷さんが、
バンクシーをリスペクトする理由を語りました。
「こうやれば売れるは、後追い。
いま、マーケティングは、行き詰まっている。
自分はこうやるが、ブランディング。
バンクシーのやりかたが一番勉強になる。」と中谷さん。
ブランディングの根底にあるのが「自分軸」。
バンクシーから学ぶべきは「信念」だったのですね。
「東洲斎写楽は誰?」――これは歴史好きの格好の話題です。
写楽同様、謎に包まれているのがバンクシー。
ネットには、バンクシーに関する情報が多数ありますが、
その正体は、いまだ明らかにされていません。
「バンクシーにまつわる伝説は、バンクシー側が流している。
このあたりも含めてのアート。」と中谷さん。
生々しい一個人よりも、「バンクシー」として偶像化したほうが、
発したいメッセージは伝わるのでしょうね。
バンクシーは、イングランド南部のブリストル出身とのこと。
ここは昔から奴隷貿易の拠点として栄えてきました。
そうなると、こんにちでは移民問題に目がゆくことになります。
「現代アートは、異世界の見方、新しい概念を提示する。
ものの見え方、考え方が変わる。これが現代アートの意義。
自分のメッセージを、どう流行らせるか。
その胡散臭さは、大事な個性になる。」と中谷さん。
有名なサザビーズでの「シュレッダー事件」も、
中谷さんの見立てでは「完璧に計算された演出」。
現代アートは、作家と鑑賞者の駆け引きが醍醐味なのですね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
「他人と比較していると幸せになれない」という箴言、
その本質は「自分の人生の主役になれ」ということなのかも。
お金持ち・貧乏、偉い・偉くない、カッコいい・カッコ悪い。
これらは、「主人公」の条件になりえないことは、
映画や小説の世界を見れば、あきらかです。
中谷さんは、「成長しているが主人公」であると定義しました。
どんな苦境に陥ろうとも、どんな悲哀を味わおうとも、
成長しているかぎり、その人は「主人公」なのです。
「主人公」として生きる作法、中谷さんから伺いました。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「アートの月ナカ、映画の別ナカ」も3年目を迎えました。 それ以前は「仕事の月ナカ、恋愛の別ナカ」でした。 コンセプトが変わりましたが、じつは本質は変わっていません。 「絵なしで絵画、映像なしで映画を語りたい。」と中谷さん。 映像に頼りがちな現代人に必要なのが想像力修行。 仕事、そして恋愛の究極型は「妄想」の世界。 「月ナカ/別ナカ」は、こうして進化を遂げているのです。
1本目の映画は「マジックマネー」。 同窓会で、友人たちの「成功」を見せつけられた夫婦。 こっそり持ち帰ったティーポットがとんでもない代物でした。 なんと「痛い」思いをすれば、お金が飛び出してくるのです。 奥さんが夫の股間をガツン。痛ければ痛いほど出てくるお金。 他人の「痛み」もお金になることを知った夫婦は、 しだいに禁断の領域に踏み込んでいきます。 「エスカレートするのが、人間のさが。」と中谷さん。 人間の本性をあぶり出すのが、本当に怖いホラー映画なのです。
幸せ絶頂の人を痛めつけるほど、お金になることを知った夫婦。
行動は偏った「社会正義」の色合いを深めていきます。
「幸せな人を引きずり落とすほうが、お金になる。
引きずり落とす快感。まさに、ネットの誹謗中傷の世界。
ところが、いきなりフランス映画的に終わってしまう。
設定は浅い。でもメッセージは深い。現代アート的な映画。」
「嫉妬」という手ごわい情動に直面できる映画です。
2本目の映画は「ラブ&ドラッグ」。ロマンチックコメディです。
主人公ジェイミーはファイザー社(実名で登場!)の営業マン。
持ち前のイケメンと感じのよさ、そして会話力をフル活用して、
ライバルとの熾烈な競争をたたかう日々を送っています。
そんなジェイミーが、とあるクリニックで出会ったのが、
アン・ハサウェイ扮するマギーでした。
そっけないマギーに食らいつくジェイミーは、思わぬ展開に――
マギーに運命的なものを感じたジェイミー、果敢に挑みます。
患者であるマギーの電話番号を探り出して、電話をかけます。
「『さっき罵倒された男ですけど――』とモテモテくん。
ここがモテモテ君の粘り。これくらいの余裕が欲しいよね。
屈しないのがモテモテ君。」と中谷さん。
すごすごと引き下がるのが紳士的なのではありません。
「粘り強さ」が、モテの本質なのかもしれませんね。
ファイザー社から発売された「バイアグラ」。
出入りになったクリニック院長からも、お呼びの声が(笑)
マギーともいい関係になり、仕事も絶好調のジェイミー。
「仕事? 絶好調だよ。2000件も問い合わせが殺到している」
ジェイミーがかなり数字を盛って、強がった相手は母親でした。
「お母さんに認めてもらいたい。これが、彼の悩み。
だから女性に行く。でも『愛している』が言えない。」と中谷さん。
過度に女性を求めるのは、母親からの十分な愛情を受けていない。
そんな真理を見せてくれる、印象的なシーンでした。
本作のテーマの一つに、パーキンソン病の実情があります。
パーキンソン病とは、手足の震えなど、動作に支障をきたし、
しだいに日常生活全般が困難になっていく難病です。
作中に、パーキンソン病患者たちの集いのシーンがありました。
「パーキンソン病の会の人たちの発言が、吹っ切れている。
ユーモアたっぷりに、病気を笑い飛ばそうとしている。
いま生きていることが、なによりも素敵なことである。」
一方で、介護する人の胸の内も吐露されていて、じつにリアル。
「根本に芯がある社会派映画。」と中谷さん。
社会的なメッセージがじんわり浸透してくる名作です。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美