3月2日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「美が、歴史を作る。」
――『紅茶史』
「言葉に、愛を感じよう。」
――『抱きたいカンケイ』『街の灯』
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
今回のテーマは「紅茶史」。
紅茶をめぐる世界の経済、政治、そして文化の歴史を総覧します。
外貨を獲得するために、紅茶栽培に力を入れた明治政府。
株式会社、保険会社を生んだ、資本主義の寵児・オランダ。
エドワーディアン様式、ビクトリアン様式――
イギリス家具の様式は、イギリスの王様の名前が由来。
朝鮮出兵が契機となって盛んになった日本の製陶。
ボストン茶会事件が発端で始まったアメリカ独立戦争。
「紅茶」で、世界の成り立ちを学んでみませんか。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「無発酵が緑茶、半発酵が烏龍茶、完全発酵が紅茶。
紅茶は後から広まった。最初に飲んだ日本人は、大黒屋光太夫。
幕末にロシアに漂流して、エカテリーナ2世に拝謁したとき。
ロシアは紅茶大国。ロシアンティーには、ジャムをどっかり入れる。」
同じ茶葉をそれぞれの国柄や文化に見合ったかたちでいただく。
一つの切り口だからこそ、多様ぶりが見えてきますね。
明治時代の日本は、とても貧乏でした。
それでも富国強兵しなければ、列強に侵略されてしまう。
外貨の獲得は、政府にとって一大事だったのです。
「紅茶輸出すると、外貨が稼げるよということで、
紅茶伝習所が設立された。」と中谷さん。
紅茶伝習所、明治8年に今の熊本県山鹿市に設立されました。
苦戦を強いられた和製紅茶でしたが、技術を革新し、
ついにイギリスやロシアにも輸出するようになりました。
1588年、イギリスとスペインの海戦を契機に、
世界貿易の覇権はイギリスとオランダに移っていきました。
「スペインはゴチゴチのカトリック。商売がやりにくい。
スペインから独立したオランダは、プロテスタントに切り替えた。
商売は悪ではない。祈りの一つと考えた。
アムステルダムには、物資が集まり、造船技術も発達した。
そこから、株式会社や保険会社、そして郵便制度が生まれた。
フェルメールの『手紙を読む女性』は、最先端の文化。」と中谷さん。
オランダの成り立ちを通じて、資本主義を勉強しましょう。
「ビジネスにアートを」といわれるようになりましたが、
アートは、いつの時代も為政者の嗜みだったようです。
「エドワーディアン様式の前はビクトリアン様式。
イギリス家具の様式には、王様の名前がつけられている。
王様が文化に興味がないと、様式として残らない。
上に立つ人間には、美的センスは必要。」と中谷さん。
アートの世界は、ビジネスの世界に通じるのですね。
「偶像廃止なのに、なぜ?」
「免罪符って何? お金で罪滅ぼしできるってどういうこと?」
「十字軍失敗してばかり。文化も向こうのが進んでいるし」
理念と現実の乖離が広がり、矛盾が深まるキリスト教。
そんなとき登場したのがマルチン・ルターです。
「元に戻そうよとルターは提唱した。ひたすら、まじめ。
プロテスタント、つまり抗議はしなかった。」と中谷さん。
宗教改革の本質に迫るトーク、ぜひお聞きください。
戦国時代、茶の湯文化が大いに盛んになりました。
だんだん与える土地がなくなってきたので、
茶器をその代わりとしたという説もあるそうです。
この価値体系を生み出したのが信長、そして利休。
茶人によって、武将たちも茶器に開眼し始めました。
「唐物すごいな、高麗物すごいなと、武将たちは目をつけた。
朝鮮出兵した九州の大名たちが、陶工を連れ帰った。」と中谷さん。
有田焼の生みの親、陶工・李参平もその一人だそうです。
和製紅茶は、その後「日東紅茶」になりました。
イギリスの紅茶といえば、リプトン紅茶。
「ユニオンジャックのあるところにリプトンの紅茶。
そんなときに起こったのがボストン茶会事件。
イギリス東インド会社を救うために制定されたのが茶税法。
これに反発したボストン住民が、茶箱を海に投棄した事件。
これがきっかけとなり、アメリカ独立戦争が始まった。」
お茶をめぐる経済、政治、文化、深いですね。
**
月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
「抱きたいカンケイ」の主演は、ナタリー・ポートマン。
ナタリー扮する主人公は、後腐れない体のカンケイを、
一方のパートナーは、真剣な純愛カンケイを望んでいます。
ふたりの「交渉」は「体」から次第に「言葉」に。
カンケイを深める「言葉」を味わえる名作です。
「街の灯」は、言わずと知れたチャップリンの代表作。
あるホームレスの男が、盲目の花売り少女に出会います。
彼女は、チャップリンをお金持ちの紳士であると勘違い。
チャップリンが用立てたお金で、目の手術が成功した少女。
「あの紳士はいったい誰?」と思っていた、そんなとき――
セリフの味わい方を教えてくれた中谷さん、今回は、
サイレント映画の観方を教えて下さいました。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「抱きたいカンケイ」の主演は、ナタリー・ポートマン。
ナタリー扮する主人公は、後腐れない体のカンケイを、
一方のパートナーは、真剣な純愛カンケイを望んでいます。
ふたりの「交渉」は「体」から次第に「言葉」に。
カンケイを深める「言葉」を味わえる名作です。
「街の灯」は、言わずと知れたチャップリンの代表作。
あるホームレスの男が、盲目の花売り少女に出会います。
彼女は、チャップリンをお金持ちの紳士であると勘違い。
チャップリンが用立てたお金で、目の手術が成功した少女。
「あの紳士はいったい誰?」と思っていた、そんなとき――
セリフの味わい方を教えてくれた中谷さん、今回は、
サイレント映画の観方を教えて下さいました。
★別ナカ178――7つの学び
収録にあたって、中谷さんは大量のメモを準備してきます。
整った手書きレジュメは、見惚れてしまうほどです。
「レジュメで用意した30個のネタで、使うのはいくつもない。
リアクションが薄いと、20も使ってしまうことになる。
芸が練れてくると、脱線や雑談がうまくなる。
サイドストーリーとフラッシュアイディアが一番強い。」
「別ナカ」の聴きどころは、映画のサイドストーリーと
中谷さんのフラッシュアイディアなのです。
「抱きたいカンケイ」は、ナタリー・ポートマン主演のラブコメディ。
エマとアダムはいわゆるセックスフレンド関係。
それは、エマが望んだもので、アダムは真剣に恋愛を求めています。
「ナタリー・ポートマンには、オードリー入っている。」と中谷さん。
たしかに、チャーミングで行動的なオードリーを彷彿とさせます。
「おしゃれ泥棒」「マイ・フェア・レディ」「ローマの休日」、
これまでご紹介したオードリー作品とあわせて観たいですね。
2本目の映画は「街の灯」。チャールズ・チャップリン映画です。
「原題は、シティライツ。1931年制作のサイレント映画。
サイレントは、情報量が多い。観る人の力量が問われる。
チャップリン映画は、貧富や強弱が描かれる。
シルクハットにスリーピース、そしてステッキ。
だけど、ホームレス。これがチャップリン。」と中谷さん。
自殺しようとしていた富豪を助けたチャップリン。
命の恩人として歓待されて、酒を酌み交わすことになりましたが――
いつの頃からでしょうか、すっかり当たり前になったテロップ。
調べてみると、1990年代半ばから定着したとのことです。
「野球を観るとき、テレビだと油断する。
ラジオだと、そうならない。脳内イメージも鍛えられる。
テロップが増えると、観る力が弱くなる。」と中谷さん。
テレビは、ラジオの発展型ではないように、
サイレントはトーキーとは別物として観るのがいいようですね。
「お花を売っている目が不自由な少女。そこへ高級リムジン。
ドアが開いたタイミングに、車内を通り過ぎて、
少女の落としたお花を拾ってあげるチャップリン。
走り去ったリムジン。金持ちと勘違いされて立ち去る。
このたった3分のシーンに1年以上かけた。」と中谷さん。
ところが、「街の灯」のあらすじを調べてみると――
中谷さんのお話になった筋とは、違うような・・・
この「ないシーン」こそ、中谷さんの映画評の醍醐味ですね(笑)
ネタバレになってしまいますが――
盲目の少女に、手術費用を用立てたチャップリン。
ある日、ひょんなことから、その存在を知ることに。
「『You?』は、世界一短いアイラブユー。
純愛。ワンワードだけが感動的。
センチメンタルな音楽で癒やされる。」と中谷さん。
「街の灯」を観て、私もチャップリン映画に魅了されました。
「ステッキは日本製。マネジャーの高野虎市をはじめ、
自宅スタッフは全員日本人。4度も日本に来ていて、
515事件に、あやうく巻き込まれそうになった。」と中谷さん。
調べてみると、和風ステーキやてんぷらも好きだったようです。
黒澤明、手塚治虫、三谷幸喜、萩本欣一、太田光、そしてドリフ。
日本の映画や喜劇に大きな影響を与えたチャップリン。
この機会に、しっかり観ておきたいですね。
**
月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美