2月2日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「神話を持つと、楽しくなる。」
――『ギリシャ神話』『エジプト神話』
「善と悪を、わけない。」
――『セント・オブ・ウーマン』『戦火の馬』
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
夫婦げんかから戦争まで、すべての争いの源は、善悪二元論。
自分が善で、相手が悪だと決めつけるから、争いは起こります。
「雨に善か悪もない。運動会を中止にする雨もあれば、
作物を育ててくれる雨もある。足元を悪くする雨もあれば、
相合い傘させてくれる雨もある。自然界には、善悪はない。
だからヒールといっても、悪というわけではない。」と中谷さん。
今回のテーマは「寛容」。神話から「多様性」を読み解きます。
善悪二元論で苦しんでいる方に、お勧めの講義です。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
善悪は、自分の価値基準で生まれます。
たしかに、価値軸を確立することは、勉強の目的の一つです。
でも、同時に寛容性を身につけていかなければなりません。
「一神教は、善悪で分ける。神と悪魔、天と地獄という構図。
ギリシア神話は多神教。いろんな神様がいる。
神様は人間的。いいも悪いもない。」と中谷さん。
神話から学べること、それは「寛容性」なのです。
ゼウス、ヘーラー、アテーナー、アポロン、アプロディーテー、
アレース、アルテミス、デーメーテール、ヘーパイストス、
ヘルメス、ポセイドン、ヘスティアー。いわゆる「オリンポス12神」です。
「ややこしくしているのは、ゼウス。恋人愛人だらけの神様。
ギリシア神話は、ゼウスをおさえておけばいい。」と中谷さん。
ちなみにゼウスは、ギリシャ神話における全知全能の最高神。
でもやっていることは、うっかり者の浮気なおじさん(笑)
まずは、ゼウスからギリシア神話に入っていきましょう。
エデンの園の禁断の果実を食べてしまったアダムとイヴ。
最初にイヴに食べることをそそのかしたのが、蛇。
この蛇はアダムの前妻であると「旧約聖書」にあるそうです。
「前妻の名前は、リリース。悪女で、蛇に化けた。
ゴタゴタ感があるから、新約聖書に記述はなくなっている。
聖母マリアは、ヴィーナスから派生した。元々は一つ。」
ギリシア神話とキリスト教の習合が見て取れるのですね。
「天使とキューピッドが混同されるけれど、それは違う。
天使は神の使いとして、人間界に遣わされたエンジェル。
一方、キューピッドは、ヴィーナスの子供。恋の神様。
神様と人間の間にいるのが妖精で、
ニンフ、式神、ティンカーベルなどがいる。」と中谷さん。
私もこのあたりがごっちゃになっていました。
この機会に、きちんと整理しておきたいですね。
神話は、おとぎ話ではありません。
じっさいの歴史の流れをかなり踏まえているからです。
「世界の始まりは原始の神ヌン。そこに創造の神アトムが現れる。
エジプトのアダムとイブがオシリスとイシス。兄弟で夫婦。
イシスは処女懐胎。呪術で子供を授かった。
これがギリシア、ローマに伝播して、マリア様に結びついた。
ヨーロッパがたどる歴史を、エジプトはすでに体験していた。」
世界三大文明の一つ・エジプトの存在感あふれる講義です。
エジプトの死生観は独特。深い示唆が得られます。
「悪いことすると、死者の権利が得られない。
死後の世界には、もう1つのエジプトがあって、
2つの世界を行き来することが、再生するということ。
自分になりたいか。もっといい自分にになりたいか。
死と生まれ変わりに、自己肯定感が表れる。」と中谷さん。
日々成長するよう、全力で生きよう。
「死者の書」の精神は、中谷思想そのものですね。
ギリシア神話やエジプト神話は、多神教の物語。
多神教の神様は「人間」というより「自然」の化身のようです。
「林は、人工的に造林された。その展、森は自然発生的。
鎮守の森はあるけれど、鎮守の林はない。
こうして、この花が生まれた。あれが、あの星になった。
自然とつながっていくのが神話。」と中谷さん。
自然とも共感・共鳴、これが多神教の本質なのですね。
**
月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
「セント・オブ・ウーマン」の主人公・スレード中佐は盲目。
だからこそ、嗅覚が磨かれ、言葉が磨かれました。
「戦火の馬」のアルバートは、戦場で視覚を失いました。
しかし、だからこそ、愛馬ジョーイと再会できました。
「聴くことで、映像になる。頭に入る。」と中谷さん。
五感の8~9割が、視覚情報によるといわれています。
私たちは、視覚に傾斜しすぎた日常を送っています。
映像から入る前に、聴いてみる、触ってみる、嗅いでみる。
五感を研ぎ澄ます映画、中谷さんにご紹介いただきました。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「セント・オブ・ウーマン」の主人公・スレード中佐は盲目。
だからこそ、嗅覚が磨かれ、言葉が磨かれました。
「戦火の馬」のアルバートは、戦場で視覚を失いました。
しかし、だからこそ、愛馬ジョーイと再会できました。
「聴くことで、映像になる。頭に入る。」と中谷さん。
五感の8~9割が、視覚情報によるといわれています。
私たちは、視覚に傾斜しすぎた日常を送っています。
映像から入る前に、聴いてみる、触ってみる、嗅いでみる。
五感を研ぎ澄ます映画、中谷さんにご紹介いただきました。
★別ナカ178――7つの学び
「僕は、テーマに関する本を100冊読んで整理していく。
でも、神話については、ふつう、ごちゃごちゃになる。
読むより聴くほうがいい。そのほうが映像になって、頭に入る。
聴いて『絵』にしていく力は、大事。観るより深い。
聴くことで、映画の観方が深くなる。」と中谷さん。
別ナカを聴いてから、映画を観ましょう。
1本目の映画は「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」。
主演はアル・パチーノ。盲目の退役軍人・スレード中佐です。
そこに現れたのが、名門高校に通う、苦学生チャーリー。
感謝祭の週末、中佐の面倒をみるというアルバイトでやってきました。
めちゃくちゃ口が悪くて、横柄な中佐を前に、たじろぐチャーリー。
ニューヨークへの機内で、つけている香水でCAに声をかける中佐。
「フローリスは、ナイチンゲールのために作った香水。」と中谷さん。
香水をカギとしながら、物語は進んでいきます。
スレード中佐は、とにかく女好き。嗅覚で「美人」を嗅ぎ分けます。
チャーリーと立ち寄ったレストランでも、香りが――
すかさず「ご挨拶をしてくる」と立ち上がったスレード中佐。
彼氏を待っているという女性に「あなたに言い寄る男たちから、
守って差し上げましょう」というわけのわからない申し出。
「そこで『お呼びでない、ちゃんちゃん』と引き下がらない。
これが男の余裕。」と中谷さん。
中佐の根性とダンディズムも、この映画の見所です。
中佐のノリにほだされて、その場でタンゴを踊るという展開に。
「チャーリーからフロアの大きさを聞いてから、踊り始める二人。
見事なダンス。観衆から大きな拍手がまき起こった。
これは、アル・パチーノのリベンジのシーン。
『ゴッドファーザー』でのダンスシーンが納得いかなかったので、
いつかダンスでリベンジしようとしていた。
彼女の香りは、オグリビー・シスターズの石鹸。
これには『タンゴ』という石鹸もある。」と中谷さん。
このあたりの知識は、中谷さんならではですね。
フローリス、オグリビーシスターズ、フルール・ドゥ・ロカーユ、ミツコ。
この映画には、4つの香水が登場します。
それぞれ、まとっている女性たちのキャラクターが印象的です。
「フルール・ド・ロカイユ、岸辺の花。優雅で上品。エレガントでセクシー。
連絡先は必要ありません。この香りをたどればあなたにたどりつけます」
中佐の嗅覚は、女性の識別だけでなく、行動力にもつながっているのです。
2本目の映画は「戦火の馬」。スティーブン・スピルバーグ監督の作品です。
第一次世界大戦前夜のイギリス。片田舎の貧しい小作農テッド。
競売で見かけた見事なサラブレッドに心を奪われ、落札。
妻のローズは烈火のごとく怒り、一方、息子のアルバートは大喜び。
農耕馬として使うということで、ローズの了解を得て、飼うことに。
アルバートが「ジョーイ」の調教を始めることになりました。
「戦争というものは、すべてを奪う」とは、粗暴な兵士のセリフ。
ジョーイのたどる数奇な運命から、戦争の悲劇が伝わってきます。
戦場のまっただなかに取り残されたジョーイ。
それを、従軍していたアルバートが救出します。
ところが戦闘は激しくなる一方。毒ガスでアルバートは目をやられます。
見えないアルバートでしたが、ジョーイを「発見」。
「できるだけのことをさせてもらう。彼も兵士だから」と軍医。
軍馬もともに戦う仲間。そう思わせるジョーイのたたずまいが見事。
私も観ましたが、ジョーイの演技力には驚かされました。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美