6月2日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「美しさは、力にまさる。」
――衆道の美意識。
「席を譲ると、友だちになれる。」
――『スプラッシュ』『赤ずきん』『フォレスト・ガンプ』
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
「衆道」という言葉を知っている方は、かなりの歴史通かも。
いまでいえば「LGBT」の「GB」に相当するのでしょうか。
日本の歴史を紐解くと「衆道」はきわめて一般的でした。
それよりも、強固な紐帯、さらには雅で麗しい絆というレベルでした。
「関白藤原頼通もリバーシブルだった。
森蘭丸と信長は対等な関係だった。」と中谷さん。
つい目を背けがちな「衆道」から見えてくる日本人の人間関係史。
「至上の愛」を感応する心得、中谷さんから伺いました。
★こんな方にお奨めです♪
□「衆道」に偏見を持っている方。
□日本史の奥深い部分に触れたい方。
□「美」を希求する精神を体得したい方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「おちごさん」を「御稚児」に変換できる人は稀でしょう。
御稚児とは、一般的には、お寺の法要などに参加する子供たち。
でも、ここでいう御稚児さんの役割は3つ。
「舞や楽器を行う。食事(喝食)を担当する。
3つめは、お坊さんの添い寝をする。」と中谷さん。
女犯は厳しく禁じられた仏教者。しかし、衆道は別でした。
勉学を究めるための必要悪とされていたのです。
すっかり市民権を得たBLこと、ボーイズ・ラブ。
でも同性愛に対しては、抵抗のある方が少なくないはず。
「日本には伝統的に、男性、女性、そして美少年が存在した。
関白・藤原頼通は愛妻家。奥さんも大事にしたけど、彼もいた。
奥さんも、それを公認していた。そんな時代。」と中谷さん。
BL現象は、平安時代への先祖返りなのかもしれません。
生理的好悪とは別に、現代を客観視するのも大事ですね。
「平安時代は、ご主人様との圧倒的な上下関係。
でも、戦国時代は対等。信長と森蘭丸は対等だった。
男同士の愛で結束した。薩摩兵の強さは、兵児組にあった。
体でだけでなく、精神で結ばれていた。」と中谷さん。
ところが西南戦争後、キリスト教的価値観の流入によって、
武士的男らしさは衰退していきました。
没後50年。噂の絶えない三島由紀夫が目指したのは、
そんな「武士」の世界だったのかもしれませんね。
江戸時代には、何度も「禁制」が出されました。
奢侈や博打、遊郭ならともかく、芝居小屋がなぜ禁止に?
「遊郭は女性、芝居町は男性。陰間とは男娼。
売れたら舞台で春を売れる。売れない間は、陰間で春を売る。
天保の改革で、江戸の風紀を乱すとされて取り締まられた。」
これには、長年の謎が解けたと、奈良さんもびっくり。
テレビの歴史ものでも、ここまでは実相に肉薄できませんね。
「衆道は、茶道、華道、武道と並ぶ四大道の一つ。
江戸時代の『男色大鑑』という本には、こう説かれている。
優しさと奉仕、風流心と品格、損得勘定を捨てろ。
すばらしいよね。衆道は道だったんだね。」と中谷さん。
体系化された芸と美学が「道」。ならば、衆道も道。
今まで、誰も語ってこなかった禁断の日本史。
教養とは、教科書以上の物語を体得することなのですね。
昭和の時代は「男は中身」。外見を気にするのは男ではない。
そんな時代でした。ところが、いつの頃からか時代は反転。
「ただし、イケメンに限る」という風潮になっていました。
「平和になって、武から美へと戻った。」と中谷さん。
平安時代由来の「美」至上の時代に回帰したというのです。
そう考えると、少し前のビジュアル系からBLという流れは、
男性が「美」を追求する世相は、平和な時代の象徴なのですね。
「美」を追求するのが芸術。芸術こそ、不要不急の極み。
同じく、同性愛は「不要不急」。子孫を成すことない営みは、
無駄であるとして、古今東西、宗教的にも批判の対象でした。
「愛の時代はなく、システムの時代になってしまった。
衆道は生殖には無駄だけど、愛があった。
無駄だけど、人間にとって不可欠なものが美。」と中谷さん。
唐突に始まった「衆道」ですが、行き着いた先は「芸術」。
「芸術」というものの本質を実感させられました。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
才能とは、残酷なものです。いくら努力しても、
「生まれつき」で決まる部分が大きいことは否定できません。
「うすのろ」として生まれてきた「フォレスト・ガンプ」。
現代を生きる上では、才能に恵まれているとはいえません。
でも、彼には神様から与えられた天分がありました。
それは「素直」「誠実」「感謝」。
その芽を花開かせたのは、ガンプのお母さんの愛。
根性ある本気のお母さんの愛情は、かけがいのない慈雨。
才能を美徳で開花させる心構え、中谷さんから教わりました。
★こんな方にお奨めです♪
□運命の切り開き方を体得したい方。
□素直に誠実になれない方。
□トム・ハンクス映画に興味のある方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
先にご紹介した「ブリッジ・オブ・スパイ」の主演はトム・ハンクス。
今回は「スプラッシュ」と「フォレスト・ガンプ」をピックアップ。
「トム・ハンクスを観たあとは、ほのぼのした気分で眠れる。
現代の童話を、リアリティをもって演じられる稀有な俳優。」
「スプラッシュ」当時は20代後半、「フォレスト・ガンプ」は30代後半、
「ブリッジ・オブ・スパイ」は50代後半のトム・ハンクス。
トム・ハンクス映画を観て、歳の重ね方も吸収したいですね。
2本目は「赤ずきん」。原題は「Red Riding Hood」。
童話の「赤ずきん」とは、だいぶ違うテイストのホラー映画です。
小さな村に現れる「人狼」の影。村人は疑心暗鬼に陥ります。
「嫉妬は怖い。ふだん、親友と言っている友達が裏切る。
納得いかない事件が起こると、魔女をつくって、丸く収める。
それが魔女狩り。だから、ヨーロッパでは裁判制度が発達した。」
これだけの教養を得られるのも別ナカならではですね。
国民性によって、物語に対する「好み」は異なります。
「映画の世界には、アナザーエンディングというものがある。
エンディングは2通り作られて、試写会で反応をみる。
日本人は悲しいエンディングが好きだけど、ほかは違う。
最近のブルーレイには、どちらも収録されている。」と中谷さん。
本作「赤ずきん」にも、2通りのエンディングがあるとのこと。
観くらべてみるのも、映画の新しい味わい方ですね。
ジョギングを始めた奈良さん、ラジオを聴きながら走るそうです。
「僕が走る時は、フォレスト・ガンプのテーマ曲。
テンポがないから、楽々と足が運べる。」と中谷さん。
ついに3年2ヶ月走り続けたフォレスト・ガンプ。
きっかけは、ジェニーからもらったナイキのスニーカー。
運動不足が気になる方、この機会にジョギングはいかが?
テーマ曲を聴きながら、ナイキのスニーカーでどうぞ。
「ガンプ」とは「うすのろ」という意味。
ジェニーは、そんなガンプを気遣い、いたわってきました。
いじめられるガンプに「走って! フォレスト、走って!」と絶叫。
「絶対、勇気出しちゃだめよ。勇気出したら死ぬからね」と
ベトナム戦争に向かうガンプに忠告しました。
素直なガンプは、ジェニーの言葉に誠実に向き合いました。
ガンプが人生を切り開く原動力になったのは、その誠実さ。
素直と誠実は、最高の人生ノウハウなのですね。
ガンプの人間性は持ち前の性格もあるでしょうが、
お母さんの愛と教えが大きかったことは、間違いありません。
「本当に必要なお金は少し。残りは、見栄を張るためだけ」
「神様からの贈り物を使って、ベストを尽くすのよ」
「前に進む時には、過去は後ろに置いていきなさい」
息子の前途を憂いながら、本気と根性で育てたお母さん。
「僕は賢い人間じゃない。でも、愛が何かは知ってるよ」
ガンプの言葉は、お母さんの愛情のたまものなのですね。
白い鳥の羽が舞い上がり舞い降り、ガンプが手にして本に挟む。
「1本分の費用をかけた」という、とても印象的な冒頭シーンです。
「運命は決まっているか、それとも風に吹かれていくものか。
「あんた、乗るの? 乗らないの?」と尋ねる黒人女性運転手。
彼女の声は、神様の声だった。」と中谷さん。
「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない」
ガンプのお母さんの教えは「乗りなさい」だったのですね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美