2月3日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「唇に、詩を口ずさもう。」
――ドMを楽しむ生き方術。
「トンネル」「墨攻」
――良心の呵責にさいなまれよう。
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
SMとは「人生の達人」の作法なのかもしれません。
両極を極め、臨機応変・縦横無尽に、役割を演じきる。
明治の文豪・谷崎潤一郎は、時にはS、時にはMを演じました。
その作品は、一部から色物扱いされますが、それは残念なこと。
「通俗的なテーマを、古典的な文体で書く。
書いていることは耽美主義ではなく、自然主義。
エロを、古典的な文体で、耽美的に描くのが谷崎文学。」と中谷さん。
アンプロンプチュ(即興プレイ)とページェント(野外プレイ)。
谷崎潤一郎が描いた官能の世界は、エロを超越した美の世界。
明治の文豪から、縦横無尽に生きるすべを学びましょう。
★こんな方にお奨めです♪
□詩を味わいたい方。
□SMの本質を理解したい方。
□文豪たちの情念にふれたい方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
中谷さんが詩に開眼したのは、恋愛体験がきっかけでした。
「詩が好きになるって、なんだろうね。
思えば、片思い。この時、すでに詩にはまっていた。
『そうそう、その気持ち、なんでわかるの』って。
表現は狭ければ、狭いほど共感できる。」と中谷さん。
愛情、友情、仕事、そして革命――
世の中には、燃えられる対象はいくらでもあります。
燃える心を、いつまでも持たせてくれるのが詩なのですね。
中谷さんの心を鷲づかみにしたのが、佐藤春夫の「別離」。
「人と別るる一瞬の 思ひつめたる風景は
松の梢のてつぺんに 海一寸に青みたり――
詩は、一行目が勝負。頭サビ、これはつらい。
自分の身の上に置き換えて、一手目で長考してしまう。」
まだ、つきあってもいない彼女との別離を妄想して苦しむ。
中谷さんの想像力の源泉は、詩にあったのですね。
フランス映画を鑑賞するコツは、一つの場面を味わうこと。
これは映画の「別ナカ」で、繰り返されるメッセージです。
同じことは、詩についてもいえるようです。
「詩には、筋がない。場面があるだけ。
勝手なストーリーを描いて、自分の人生を投影する。
共感して握手するのが、詩の味わい方。」と中谷さん。
詩を学んで、自分の「場面」を味わい尽くしましょう。
ノーベル文学賞候補に7回もノミネートされた谷崎潤一郎。
「痴人の愛」「春琴抄」「細雪」などの作品で知られています。
「聖母を求める気持ちと、同時に、娼婦を求める気持ち。
これは文学芸術の基本。これがSMを生んだ。」と中谷さん。
妻・千代子を、弟子の佐藤春夫に引き取ってもらい、
みずからは。妻の妹・せい子に心奪われる谷崎潤一郎。
ドSとドMを、相手次第で、自在に行き来する谷崎。
谷崎の恋愛は、SMプレイそのものだったのですね。
<私はこれから、あまり世間に類例がないだろうと思われる私達夫婦の間柄に就いて、
出来るだけ正直に、ざっくばらんに、有りのままの事実を書いて見ようと思います。>
これは「痴人の愛」の冒頭です。ナオミのモデルは、最初の妻の妹のせい子。
「通俗的なテーマを、古典的な文体で書く。
書いていることは耽美主義ではなく、自然主義。
エロを、古典的な文体で、耽美的に描くのが谷崎文学。」と中谷さん。
貞淑と奔放をアウフヘーベンしたのが、谷崎が恋い焦がれる聖女なのですね。
谷崎潤一郎と佐藤春夫。2人の因縁の関係は、人々の耳目を集めました。
谷崎の千代夫人をめぐって絶交した「小田原事件」。
その後、谷崎は夫人を佐藤に譲ることを発表した「細君譲渡事件」。
<女を知るということは、一つの世界を知ることだ。
恋愛とは共犯。愛とは闘争であり、力強い者の前に、
よろこんで征服されることだ>とは、佐藤春夫の言葉。
千代夫人を通じて乱反射していた2人ですが、
結局、似た者同士が役を変えながら演じていたのですね。
「詩がわからないという人は、声に出してみよう。
そうすれば、勝手にメロディーがついてくる。
目ではなく、耳で味わうのが詩。詩は音楽。」と中谷さん。
中谷さんの「秋刀魚の歌」の朗読は聴き応えがあります。
あはれ
秋風よ
情あらば伝へてよ
――男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
思ひにふける と。
ぜひ、詩の世界を「音」で体感してみてくださいね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
「つらい体験は、メンタルを強くする。
映画で、つらい体験をしておこう。」と中谷さん。
今回の別ナカでは、そんな「つらい」映画を2本ご紹介します。
崩落したトンネルに生き埋めになった主人公の「つらさ」。
マスコミや政治家、世論に振り回されながらの任務遂行。
救助隊帳の「つらさ」も、胸に迫るものがあります。
2本目の映画は「墨攻」。主人公は戦闘のスペシャリスト・革離。
招きに応じて戦っているにも関わらず、主君からは疎んじられ、
自分のために死者も出てしまう。「つらさ」あふれる境遇です。
みずから体験するには、あまりにも苦しすぎる。
「つらさ」を映画で体験して、強いメンタルを体得しましょう。
★こんな方にお奨めです♪
□メンタルを強くしたい方。
□良心の呵責にさいなまれている方。
□真のリーダーになりたい方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
最初にご紹介の映画は「トンネル 闇に鎖された男」です。
仕事も順調、意気揚々と車で帰路につく主人公・イ・ジョンス。
ところが、いきなりのトンネルの大崩落で生き埋めに……
あるのは娘の誕生日ケーキと、500ミリペットボトルが2本。
「つらい体験で、メンタルが強くなる。
映画で、つらい体験をしておこう。」と中谷さん。
「つらい体験」ができる、韓国映画の名作です。
今回の「別ナカ166」のテーマは「良心の呵責」とのたたかい。
「トンネル」にしても、2本目のご紹介の「墨攻」にしても、
主人公は、良心の呵責とのたたかいを繰り広げます。
「ピンとこない人は、ピンとこない。
イライラと良心の葛藤の両方持っているのが、本当の悟り。」
ガソリンスタンドのおじいさん、同じ生き埋めに遭った女性。
主人公の良心の呵責を体験して、メンタルを強くしましょう。
いつ揚げ足をとられて責任を問われるかわからない、この時代。
「言い切り」は、とてもリスクのある行動です。
救出の責任者・キム隊長は、主人公の「助かりますか?」の問いに、
「必ず助けます。私は最も優秀な救助隊員です」と明言。
救出までの行動について、具体的かつ的確に指示する隊長。
マスコミや政治家に振り回されながらも、任務を推敲していきます。
キム隊長の仕事ぶりこそ、まさにプロフェッショナルそのもの。
映画「トンネル」で、真のリーダーシップを体得しましょう。
崩落から17日目、救出のための掘削孔がついに貫通。
ところが、イ・ジョンスの周辺には、何も変化はありません。
手抜き工事のため、位置が違っていたのです。
救出にはさらに2週間――主人公は、狂乱します。「もう、だめだ」
「奥さんは『いいわ、死ねば。私も娘と後を追うから。』と言った。
『死んじゃだめ』じゃない。そうなると、生きなければとなるよね。」
極限状態の人に勇気を与えるひと言。体得したいですね。
映画「墨攻」は、戦国時代の中国を舞台とした歴史映画です。
主人公・革離は戦闘のスペシャリスト。梁の招きに応じて立ち上がりました。
しかし、梁王は革離に対して疑念を持ち、さらには暗殺も計画する始末。
「守れるかどうかは、どれだけ信用してもらえるか次第です」と革離。
さらには、自分の存在によって、無用な摩擦が生じて、死者も出てしまう…
「自分のために、よけいな死者を生み出しているのではないか。
良心の呵責に、さいなまれよう。」と中谷さん。
映画「墨攻」で「良心の呵責」とのたたかい方を学びましょう。
敵兵に追われて、断崖の上に追い詰められた革離。
ヒロイン・逸悦に「泳げるか?」と問いかけます。
ヒロインは「泳げません」と言うやいなや飛び込みました。
「泳げないからと言って、飛び込まなかったら、
革離は逸悦を突き飛ばしていた。結局、一緒。
僕がすごく好きなシーン。いいラブシーン。」と中谷さん。
戦いの渦中で交わされる、淡い恋愛感情。
濃厚なシーンがないぶん、逆に心に残る愛情描写でした。
革離の真の敵は、自分を招聘した梁王だったのかもしれません。
最後に革離は、梁王から謀反人の濡れ衣を着せられることに…
敵である趙の将軍は、こう言いました。
「嫉妬を招いたことは、そなたの負けだ」
おたがいをリスペクトしあう将軍のひと言に自省する革離。
「嫉妬は怖い。味方の上司が、一番たいへん。」と中谷さん。
革離が制しきれなかったのは、人の心の暗部だったのです。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美