6月3日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「エドヴァルド・ムンク」「ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ」
――自信がないと言える自信を持とう。
「恋はデジャ・ブ」「フランケンシュタイン」「千夜一夜物語」
――人のためにすると、幸運が来る。
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
フォロワーを増やして、自己肯定感を高めたい。
「いいね」をもらって、他者承認欲を満たしたい。
「他者評価」が「自己承認」になっているのが現代のSNS社会。
この状況を、100年前の前衛芸術家たちは、どのように見るでしょうか。
痴情のもつれから、恋人に拳銃で撃たれたムンク。
モデルを片っ端から愛人にして、妻を死に追いやったロセッティ。
いまなら「非常識」と罵られたり、「不倫」として糾弾されます。
でも、そんなケタ外れな人だからこそ成せる仕事があることも事実。
「庶民」のモノサシでは、芸術は理解できません。
「芸術」を鑑賞するための指標と視座、中谷さんから伺いました。
★こんな方にお奨めです♪
□ジブリの世界の深いところを知りたい方。
□「ムンク」の芸術を理解したい方。
□「ロセッティ」の芸術に興味のある方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
展覧会の絵巻物は、広げられた状態で展示されています。
でも実際には、両手の間で手繰りながらワクワクドキドキ。
絵巻物は、紙芝居のように読まれていたのでした。
「伴大納言絵詞の見どころは、絵の具が剥げているところ。
当時の女官たちが『真犯人』を指差すうちに落剥した。」と中谷さん。
美術館の展示から、当時の情景を読み取るために必要なのは、教養。
中谷さんの「教養論」は、そんな想像力の鍛錬を目的としているのです。
高畑勲は、日本アニメの大功労者。ジブリでの活動で知られています。
「『ホーホケキョ となりの山田くん』は、世界がびっくりした。
僕もびっくりした。つい、『いいの?』と言ってしまった。
でも、あれこそ鳥獣戯画のタッチ。輪郭線がつながっていない。
電信柱が1本あるだけで、サラリーマンの帰宅と読み取れる。
これが日本人の抽象性であり、絵巻物以来の伝統。」と中谷さん。
「風の谷のナウシカ」や「火垂るの墓」に感動した方、本作もぜひ!
映画のCGは、わざとリアルにしすぎていないのだそうです。
その理由は、リアルになるすぎると、不気味で引いてしまうから。
「超リアルにすると、気持ち悪い。不気味になる。
マネキンも、超リアルにすると、服が売れなくなる。
ペッパーくんも、あえてロボット感を出している。」と中谷さん。
文章でも、「正確」だから伝わるとは限りません。
同様に、人の心に訴求するためには、「デザイン」が必要。
芸術の本質は、心に伝わるかどうかにあるのでしょうね。
中谷さんの芸術講義には、時代背景の解説が不可欠です。
それが、芸術家の理解の奥行きをもたらしてくれます。
「シュールレアリストも科学者も、ナチスが追い出した。
ヨーロッパの人材が、こぞってアメリカに移り住んだ。」
ダリ、エルンスト、シャガール、そしてマン・レイ。
のちにアメリカで花開く「アート」は、彼らが撒いた種子から。
人物像と歴史的背景で、芸術は、より味わえるのですね。
ムンクは、「死」と「不安」を描いた作家として知られています。
彼は、厳格な軍医の父を持ち、厳しく育てられました。
そのせいか、恋愛で屈折し、初めての恋愛相手は、年上の人妻。
「拳銃暴発事件を起こした恋人のトゥラ・ラーセンは、元々パトロン。
芸術家のパトロンは、お金持ちの未亡人に多かった。
古典好きの男と違って、女性は古典にとらわれない。
無名の才能を育てたいという母性もある。」と中谷さん。
男性にとって女性との出会いは、一生を決めるものなのですね。
ムンクは、拳銃暴発事件をきっかけに、精神的にゆらぎ始めました。
「古典は理想を、印象派は見たままを描いた。ゴッホが初めて内面を描いた。
『ひまわり』は、ひまわりという植物ではなく、自分の内面を描いたもの。
南のゴーギャンと北のムンクが、ゴッホの系譜を継いだ。」と中谷さん。
ムンクの代表作として、あまりにも有名な「叫び」。
描かれている人物が抑えているのは「耳」。
苦しめる幻聴に、耳をふさぎたいムンク自身が描かれています。
ムンクの絵特有の「非常識」は、彼自身の精神の「ゆらぎ」だったのです。
「ロセッティは、傷つきやすいイケメン。」のロセッティ、
その女性関係は派手で、妻エリザベスがありながら、
モデルを務めたファニーやジェーンを愛人にしてしまいます。
そんな人間関係のなかで精神を病んだ妻エリザベスは、
薬物中毒で、32歳という若さで亡くなってしまいました。
それを嘆き、深く悲しんだロセッティ。
妻を悼んで「ベアタ・ベアトリクス」という名作を遺します。
愛妻家なのか、それともモラハラ夫なのか。
芸術家は「モラル」という尺度では測れるものではないようです。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
「絶対借りないでしょ、このタイトル」と中谷さん。
そのタイトルとは「恋はデジャ・ブ」。たしかに借りません(笑)。
でも、中谷さんの解説を聴いたあと観ましたが、大感動しました。
深い叡智に満ちた名作として、私の心に刻まれています。
映画「フランケンシュタイン」も「ありえない映画」でした。
ところが、中谷さんの解説を聴いたら、観たくてしようがなくなりレンタル。
「フランケンシュタイン」は「文明への警鐘」がモチーフだったのですね。
手塚治虫版「千夜一夜物語」も、最初は気乗りしませんでしたが、
観終えた今、「ちいせえ、ちいせえ」のセリフがリフレインしています。
「ありえない」はずが運命の映画に。映画は、恋愛に似ていますね。
「ありえない映画」で成長する方法、中谷さんから伺いました。
★こんな方にお奨めです♪
□「無私の精神」を体得したい方。
□映画の原作を読まなかった方。
□手塚治虫作品にふれてみたい方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「絶対借りないでしょ、このタイトル(笑)」と中谷さん。
「恋はデジャ・ブ」は、ハロルド・ライミス監督のラブコメディ。
ビル・マーレー扮する主人公が出くわした奇妙な体験、
それは――何度目を覚ましても、2月2日の朝6時を迎えてしまうこと。
絶望した主人公は、悪事や恋愛に悪用(?)する日々を送ります。
しかし、それにもやがて飽きが。最後に取り組んだのは「人助け」。
「人助けは一段上。毎日やっても飽きない。」と中谷さん。
ハロルド・ライミス監督作品で「無私の精神」を学びましょう。
「家出」した中谷少年が向かったのは、やっぱり映画館。
まず観たのは「若大将」三本立て。次に観たのが「陽のあたる坂道」。
「いい映画だな」と、その足で本屋さん。
石坂洋次郎の原作を買い求めて、家出を打ち切り帰宅しました(笑)
「『ジョーズ』にしても、人生に悩みを抱える男たちの深い話。
2時間に収めるのは難しい。映画は、ダイジェスト。
原作を読めば、パート2を観ている気持ちになる。」と中谷さん。
より深い世界に踏み込むために、原作を読みましょう。
「フランケンシュタイン」を書いたのはメアリー・シェリー。当時、19歳。
メアリーがのちの夫となる詩人のパーシー・ビッシュ・シェリーと駆け落ちし、
同じく詩人のバイロンたちとスイス・レマン湖畔の別荘に滞在していたときのこと。
長雨の徒然をしのぐために、「みんなで奇譚を一つずつ書こう」とバイロンが提唱。
そういう経緯で、「フランケンシュタイン」が誕生したのです。
「吸血鬼ドラキュラ」も、その場で生まれたのだそうです。
「才能は、刺激し合う。」と中谷さん。「トキワ荘」のような情景ですね。
「怪物」の生みの親は、ヴィクター・フランケンシュタイン。
墓を暴き、神に背く行為であることを自覚しながら、怪物を作り上げました。
しかし、ヴィクターの胸中は、しだいに慙愧の念が満たされていきます。
さんざん思い悩んだ挙げ句、「怪物の伴侶」を作るのを拒否しました。
「『フランケンシュタイン』がSF小説のはじまり。
進歩に疑問を持ち、科学技術と倫理感との葛藤を描いている。
SF映画のテーマは、『進歩って、どうなの?』。」と中谷さん。
科学万能が叫ばれる時代、芸術はそれに疑問を呈する役割を果たしたのですね。
「怪物」はヴィクター・フランケンシュタインに捨てられました。
「怪物」が求めた「伴侶」も、機材ごと捨てられてしまいました。
「捨てる」ことで、科学の成果は「暴走」するものなのかもしれません。
これは、映画「新感線ファイナル・エクスプレス」にも通底します。
「鉄腕アトムにしても、作ったのはお茶の水博士じゃない。
天馬博士が捨てたアトムを、お茶の水博士が育てた。」と中谷さん。
科学者のおごりが「怪物」を生み出すのかもしれませんね。
デートで映画を観終えたあとは、微妙な空気が流れるものです。
一つの「価値観」を示されて、それにどう反応すればいいか、
相手との関係性も含めて、整理しなければならないからかもしれません。
「自分の好きな映画を、面白いと感じてくれたら、つきあえる。
僕にとってのそういう映画は、手塚治虫さんの『千夜一夜物語』。
映画は、価値観の周波数が狭い。」と中谷さん。
相手との相性を占ってくれる。映画は交際の試金石なのですね。
一介の商人だったアルディンが、大富豪シンドバッドとして、
バグダッドに凱旋し、一気に王に駆け上がります。
しかし急展開。シンドバッドは、ギロチンで処刑されることに――
その時、娘に投げかけた言葉が、中谷さんのお気に入り。
「人間煎じ詰めれば一人だ。自分の夢を自分で掴み取って、
どこまでもでっかく伸びる。世の中、そこから始まるんだ」
その絶体絶命のピンチから脱出したアルディンは、こう言いのけました。
「王様か、ちいせえ、ちいせえ。王様の次はなんだろうね」
手塚治虫作品は「余裕」というものを教えてくれますね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美