6月3日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「イサム・ノグチ」「藤田 嗣治」
――制約が、新しいものを生み出す。
「ギフテッド」「The NET 網に囚われた男」「悪いことしましョ!」
――大切な人の幸せを願う人が、幸せになる。
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
父親にふりまわされるうちに、当代の名士たちとの邂逅を果たす。
人間関係に身を任せるうちに、大成していったイサム・ノグチ。
日本のアカデミックな美術界では評価されずに、単身パリへ。
誹謗中傷や白眼視をものともせず、道化を演じつづけた藤田嗣治。
彫刻家は、石から「像」を取り出す。石を取り替えたりしない。
書家は、書き損じからリカバーして、さらなる味わいを引き出す。
中谷さんは、編集者から与えられたタイトルで、書き始める。
「制約」は避けたり、なくそうとするのではなく、バネにする。
「制約」をエネルギーに転用する方法、中谷さんから教わりました。
★こんな方にお奨めです♪
□「イサム・ノグチ」を鑑賞したい方。
□「藤田嗣治」を鑑賞したい方。
□芸術が織りなす人間関係を概観したい方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
父・米次郎の突発的な行動にふりまわされる、イサム青年。
アメリカでの高校時代、野口英世との出会いを果たします。
医学者としてすでに名を馳せていた野口英世に、イサムは問います。
イサム「医学に進むべきでしょうか、それとも芸術でしょうか?」
野口「当然、芸術家だよ。すごい仕事だよ、芸術家は!」
「野口英世の器の大きさを感じるよね。」と中谷さん。
こういう「出会い」は、流れに身を任せる「覚悟」のたまもの。
流れは、あらがうのではなく、身を委ねるものなのですね。
レオナルド・ダ・ビンチ美術学校に進学したイサム・ノグチ。
早々に「天才」と評価されましたが、まだまだ駆け出しの彫刻家。
そこで弟子入りしたのは、巨匠・コンスタンティン・ブランクーシ。
「お前はうまい。ただ、中身がない」と師匠のブランクーシ。
ところが、ノグチは次第に「中身」を獲得していきます。
高村光雲・光太郎親子、知の巨人・バックミンスター・フラー。
こうした「すごい人」たちが、ノグチに「中身」をもたらしたのです。
才能を確実なものにするのは「すごい人」体験なのですね。
建築家・丹下健三とのエピソードも、心躍るものがあります。
丹下の代表作として知られるのが、広島平和記念公園。
じつは、ここには、イサム・ノグチのデザインがあふれています。
丹下はイサム・ノグチを推薦しましたが、周囲の反対にあいます。
「敵国アメリカ人」の手によるものでは慰霊にならないというのです。
「究極の彫刻は、大地。」と中谷さん。平和記念公園では、
イサム・ノグチと丹下健三の想いにもふれたいですね。
適性がどこにあるのか、自分ではなかなかわからないものです。
奈良さんも、週刊朝日から「加齢臭で書いてよ」と言われて、
書き始めたのが『加齢臭読本』として刊行されたとのこと。
中谷さんも、こうおっしゃっています。
「最近、僕は、与えられたタイトルで書いている。
意外と書ける。制約があるから、いいものができる。」
選り好みするより、周りの人からのリクエストに応える。
これが、自分の才能を発見する近道なのかもしれませんね。
ある高名な作家が「人間は欲望と恐怖心で動く」といいました。
たしかに、恐怖を避けるために、人は行動的になれます。
東日本大震災のあと、被災地での引きこもりが激減したそうです。
日々の生活の不安が、彼らを行動的にさせたのかもしれません。
「建築家は幸せになっちゃだめ」と、建築家・安藤忠雄さん。
幸せを感じてしまうと、ハングリー精神が萎えてしまう。
それでは、いい作品を創ることはできないというのです。
「不安が、エネルギー源になる。」と中谷さん。
不安は排除するのではなく、上手にエネルギーにしたいですね。
現代アートは、禅の公案みたいなものかもしれません。
「説明」なく、観る人に、いきなり問いが突きつけられるからです。
「能面が人形浄瑠璃になり、人形浄瑠璃の表情は歌舞伎になった。
日本の演劇は、すべて、お能から始まっている。
お能には、説明がない。現代アートは、お能。」と中谷さん。
以前、フランス映画には「説明」が少ないというお話がありました。
「説明」は、じつはイマジネーションの敵なのかもしれませんね。
海外に頻繁に行くようになると、日本のよさが見えてきます。
古くは夏目漱石や森鴎外、それに画家・藤田嗣治もその一人でした。
ささやかながら、私もそんな気持ちを持つようになりました。
「エコール・ド・パリには、世界中から天才がやってきた。
日本人の感性は新鮮だった。だから、一躍寵児になった。
藤田はよく『江戸』を描いた。イサム・ノグチも日本を愛した。
美術館に行くと、日本のよさがわかる。」と中谷さん。
芸術にふれることは、みずからを遠くから観ることなのですね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
「悪魔」に直面することは、誰しも、人生に一度や二度はあるでしょう。
「悪魔」に翻弄されて、破滅に向かうこともあるかもしれません。
映画「The NET 網に囚われた男」は、「悪魔」的窮地に置かれながらも、
最後まで「悪魔」に魂を売り渡さなかった男の物語です。
一方、「悪魔」との交流を通じて、人生の叡智を獲得することもあります。
映画「悪いことしましョ!」は、人間の成長を見せてくれます。
「悪魔」的ともいうべき才能に恵まれたがために、苦しむ人もいます。
映画「ギフテッド」は、自分の中の「悪魔」との折り合いがテーマといえます。
「悪魔」と交渉する心構えと技法、中谷さんから教わりました。
★こんな方にお奨めです♪
□「悪魔」に直面したときの立ちふるまいを学びたい方。
□映画「The NET 網に囚われた男」が気になる方。
□映画「悪いことしましョ!」で叡智を体得したい方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
7歳のメアリーは、数学的才能に恵まれた、いわゆる「ギフテッド」。
数学者だった母親の自殺をうけて、伯父フランクに引き取られます。
小学校にあがったメアリーにとって、学校は退屈そのもの。
でも、フランクは姉の遺志をついで、ふつうの学校生活を送らせます。
そこに登場したのが、メアリーの祖母でありフランクの母親のイブリン。
同じく数学者だったイブリンはメアリーに英才教育を施そうとして、
フランクと対立。ついに養育権をめぐっての裁判沙汰に――
映画「ギフテッド」、中谷さんの解説は必聴です。
伯父フランクは船の修理工。でも、前職は哲学の大学教授でした。
メアリーから「神様っているの?」という問いに、こう回答します。
「答えは持っている。だけど、君に押しつけない。
ひとりで考えろ。ただし、信じることを怖れるな」
いじめている上級生を殴ってしまったメアリー。
彼女に対する担任教師ボニーの対応も、中谷さん大絶賛。
「『謝りなさい』とは言わない。『言うことあるでしょ』。
『謝りなさい』と言わないのが、よい教育。」
映画で、大人の立ちふるまいを習得しましょう。
心にもないことを、怒りにまかせて、つい口走ってしまった。
そんな経験は、誰にでもあるでしょう。
でも、相手は、その言葉を真に受けてしまう。
「俺にも自分の時間をくれよ」と言ったフランクに、
メアリーは「私のせい?」と真に受けてしまいます。
ピアノを買ってくれないフランクに「死ねばいいのに」と口走るメアリー。
「人間は、思ってもみないことを言うものなんだよ」とフランク。
哲学者フランクの数々の箴言が、心に刻まれる作品です。
今回2作目としてご紹介するのは、「The NET 網に囚われた男」。
北朝鮮の貧しい家庭――男と妻、幼い娘――が冒頭のシーン。
明け方、漁に出る夫を起こして、給仕をする妻。
そんな妻に欲情してしまう夫と、応じる妻。布団をかぶる娘。
貧しいながらも、愛のある家族の情景が印象的です。
「冒頭のシーンは伏線。絶対見逃してはだめ。」と中谷さん。
その後、エンジントラブルで韓国に流された男がたどった悲劇。
そして、冒頭のシーンを打ち砕く、悲壮なラストシーン。
冒頭のシーンの大切さを、痛感しました。
「悪いことしましョ!」は、ハロルド・ライミス監督のラブコメディ。
主人公のエリオットは、いかにもモテないタイプです。
アリソンちゃんに思いを寄せるエリオット。そこに、つけ込む美人悪魔――
「1967年のイギリス映画を、今風にアレンジしている。
映画的題材は、すべて出尽くしている。
教訓があって、セクシーな映画。」と中谷さん。
古今東西変わらないのが人間の真理。
それを様々な確度から学べるのが、映画というものなのですね。
アリソンちゃんに恋するエリオット。
透明人間になって、彼女の日記を盗み見してしまいます。
そこには、理想の男性は、仕事ができる人より繊細な人の記述が。
「よし、それなら!」と、繊細な男を演じるエリオット。
ところが、思いもよらない展開に、エリオットは「666」コール…
「女性の言うことを、真に受けてはだめ。」と中谷さん。
そういえば、映画「ギフテッド」でも同じ教えがありました。
「人間は、思ってもないことを口走る」という教訓です。
映画で語られた教訓は、骨身にしみてきますね。
悪魔との契約とは、魂と引き換えに、願いを叶えるというもの。
アリソンちゃんとの恋愛成就を願うエリオット。
ところが、それにともなう困難や想定外の展開が次々と…
エリオットは最後に、こう漏らしました。
「もう願い事はいい。アリソンが幸せになりますように」
この瞬間、悪魔との契約は無効になりました。
無欲の行為をしたら、悪魔との契約は無効になるのです。
「見返りを考えてはだめ 結果よりプロセス。
天国か地獄かは、自分次第。」と中谷さん。
私たちも「悪魔」と契約してしまっているかもしれませんね。
留置場でのワンシーン。エリオットに、先輩囚人がこう語りかけます。
「魂は、売り買いできるものじゃない。
魂は、お前の持ち物じゃない。魂の持ち主は、神様なんだよ」
エリオットの失敗は、魂が自分の所有物だと勘違いしていたこと。
魂は神様からの預かりもので、「無欲」で活用すべきもの。
でも、中谷さんは、こうフォローします。
「人間なんだから、間違いもおかさないと、
なんのために生まれてきたかわからない。
映画を観ると、セクハラやパワハラをしなくなる。」
失敗からの学び方を、映画は教えてくれるのですね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美