4月8日(水)正午まで データ版:3900円/CD版8100円
「ゴッホ」「カラヴァッジョ」
――不器用な人ほど、愛される。
「新感染ファイナル・エクスプレス」、
「パリところどこ ろ」「運命の饗宴」――続ける人が、応援してもらえる。
※「備考欄」で、ご希望をお知らせください。
(300円分のポイントバック付き)
生活者としてのゴッホは、不器用そのもの。
仕事は長続きしない。人との距離感がよくわからない。
強烈に思い込みが強く、やることなすこと空回り。
そんなゴッホと並び立つのがカラヴァッジョ。
「カラヴァッジョの絵は、ハリウッド映画。」と中谷さん。
宗教画の革命児・カラヴァッジョは、とても喧嘩っ早い人でした。
ついには殺人で指名手配され、逃亡資金を稼ぐために絵を描いたとも。
日常が破綻していた2人の巨匠、しかし、とても敬虔だったのです。
「神に尽くしたい」という心情と己の中の情動の相克。
不器用だからこそ、新しい世界を想像できる。
不器用を「価値」にするための教養、中谷さんから教わりました。
★こんな方にお奨めです♪
□美術史の転換点を知りたい方。
□不器用で悩んでいる方。
□「印象派」の全体像を掴みたい方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
「印象派」とは、19世紀後半のパリで起こった芸術運動。
パリの市民社会の成熟を背景に、美術界に革新をもたらしました。
印象派の画家というと、まず名前が上がるのがモネ。
「印象・日の出」や「睡蓮」に見られるように、水と光を描きました。
もう一人の巨匠はルノワール。彼は女性と光にこだわりました。
「ゴッホはポスト印象派。印象派を大きく変えた。」と中谷さん。
ゴッホは印象派の発展型というより、じつは破壊者だったのです。
ゴッホの偉大さは、新しい美術を創造したところにあったのですね。
中谷さんのお父さんは、染物屋とスナックを営んでおられました。
よく月ナカ・別ナカでも、お父さんのエピソードが語られますね。
中谷さんの職人気質とサービス精神は、家業由来だったのです。
「ゴッホはオランダ生まれ。出身地の風土は大きく影響する。
ゴッホのお父さんは牧師、伯父さんは画商。
生まれと家業で、芸術家をとらえよう。」と中谷さん。
親や親族の仕事、そして風土と時代背景を予め勉強しておく。
「背景」を知ることで、作品を深く味わうことができるのですね。
「画家=モテる」というイメージを多くの人は持っています。
前回テーマのピカソやモジリアニはその代表例。
ところが、ゴッホは別。ぜんぜんモテなかったのです。
「ゴッホはクソ真面目。思い込みが強い。顔が近い人。
距離感がわからないからモテなかった。」と中谷さん。
画商になりながら、やはり「顔が近い」ことでクビに。
牧師や伝道師の道も開かれず、やむなく画家になったゴッホ。
ゴッホの不器用な人生は、私たちに勇気を与えてくれます。
35歳で「耳切リ事件」、36歳で精神科病院入院、37歳でピストル自殺。
幸せとはいえないゴッホの生涯。その晩年は、とくに悲惨なものでした。
彼の作品を世に送り出したのは、弟・テオの妻ヨハンナでした。
あまりにも兄に尽くす夫に対して、妻のヨハンナはやきもき。
テオもしだいにゴッホとの距離をとらざるを得なくなりました。
そんなとき、ゴッホが拳銃自殺。その半年後には、テオが病死。
2人の死を前にして、ヨハンナは自責の念に駆られたようです。
「奥さんが、必死にゴッホの絵を売った。
テオに届いた手紙を本として刊行した。」と中谷さん。
こうした人間模様も含めての「芸術」を鑑賞したいですね。
「ゴッホを継いだのがムンク。ムンクの『叫び』。あれは、
『みんな、私の悪口を言っているー!』と耳を塞いでいる姿。」
ゴッホの絵には、自身の精神状態が如実に描き出されています。
「ゴッホが、初めて絵に内面を描いた。」と中谷さん。
労働者や生活者を愛する聖職者としての慈愛の視点、
アルルに移り住み、理想郷建設に向けた情熱。
精神的に破綻を来した晩年の鬱屈。
作品の向こうにあるゴッホの心情を汲み取りましょう。
「それまでのキリスト教絵画は、難しかった。
その点、カラヴァッジョの絵はハリウッド映画。
彼がルネッサンス絵画から、バロック絵画への扉を開いた。」
すっかり「お伊勢参り」化していた十字軍。
イスラムの科学主義に太刀打ちできないキリスト教文化。
腐敗するプロテスタントに対するプロテスタントの台頭。
グーテンベルクによる活版印刷の発明。
こうした時代背景を受けて登場したのが、カラヴァッジョ。
歴史を知ることで、絵の鑑賞はより深まっていきます。
「カラヴァッジョは映像の力を取り入れた。
暗闇の中から、マリア様が飛び出してきた。
人々は、カラヴァッジョの絵で恍惚を得た。
恍惚――エクスタシーとは、悟り。」と中谷さん。
説明で、宗教的「悟り」に到達しようという従来の方法を、
映像の力で、エクスタシー=悟りに到達させようとしたのです。
カラヴァッジョの革新性は「映像」にあったのですね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美
ゾンビ映画を観ることになるとは、思ってもいませんでした。
でも、課題映画ということで一念発起。レンタルしてみました。
でも、渋々再生ボタンを押すと、いきなり引き込まれることに。
観る前は「長いな…」と思っていた2時間もあっという間。
終盤では、涙が止まりませんでした。
ゾンビ映画は、一部の猟奇的(?)嗜好の人のためのもの。
観る前はそういう偏見を持っていましたが、完全に覆されました。
恐怖と感動のゾンビ映画に続いては、フランス映画のオムニバス。
人生の間口が広がり、奥行きが深まる中谷さんの映画談義をぜひ。
★こんな方にお奨めです♪
□ゾンビ映画を毛嫌いしている方。
□凝り固まった嗜好性を打開したい方。
□フランス映画の醍醐味を知りたい方。
ゲスト:奈良巧さん(編集者)
ゾンビ映画には、これまでまったく縁がありませんでした。 怖いのは苦手なので、観る気にはなれなかったのです。 「新感線 ファイナル・エクスプレス」も正直、気乗りしませんでした。 でも、観終わったいまは、深い感動に包まれています。 「韓国映画は、疲れさせ方がうまい。」と中谷さん。 ゾンビの姿がおぞましかったぶん、「愛」が響いてきました。 新しい境地を切り開いてくださった中谷さんに、感謝です。
主人公は「人間の血を吸う職業」を自他ともに認めるファンドマネジャー。 妻とは別居、娘とも心が通わなくなりつつある。 そんな状況で、遭遇した前代未聞の事態。 「自分だけ助かればいい」とする父親に対する冷ややかな娘の視線。 ゾンビ襲来を前に「自分たちだけ助かればいい」という「大衆」。 一方で、恋人との愛に、自分の身を捧げる男子高校生。 主人公も、しだいに「愛」を取り戻してゆきます。 「人間の敵はゾンビではなく、人間。」と中谷さん。 人間の心の深淵を垣間見ることができる作品でした。
映画を見る前に、あらすじをネットで調べましたが、
高速鉄道の中でのゾンビパニックなんて、あまりにも荒唐無稽。
そんなふうに思っていました。それはものの見事に覆されました。
「同じアジア人同士だから、とてもリアルに感じられる。
韓国映画には、リアルさと情緒がある。」と中谷さん。
当初、気乗りしなかったのですが、観て本当によかったです。
食わずもの嫌いはいけませんね。映画で修行しましょう。
「パリところどころ」は全6編からなるアンソロジー作品。
第5話の監督は、巨匠ジャン=リュック・ゴダールです。
モンパルナスのロジェとルヴァロワのイヴァンに二股をかけるモニカ。
ある日、両者に送った手紙の宛名を逆にして投函してしまい――
「ゴダールの奥さんが、別の映画監督と不倫してしまった。
だけど、ゴダールは騒ぎ立てず、この映画をつくった。
嘆かないで、作品をつくろう。」と中谷さん。
「仕事」と「恋愛」を超越したゴダール、さすがですね。
「1920年代はドイツ、30年代はフランス、40年代からはアメリカ。」
「運命の饗宴」はアメリカ映画の時代の先駆けとされる名作です。
ジュリアン・デュヴィヴィエによるロマンチックサスペンスは、
一着の燕尾服をめぐる人間模様を描く、5篇のオムニバスストーリー。
「じっさいに撃たれているのに、心配かけないようにすっと起き上がる。
大騒ぎしない。男は、これじゃないと。」と中谷さん。
アメリカの時代を感じさせる「かっこいい男」を体感しましょう。
「映画の別ナカ」――課題映画は、ほとんどネットレンタルできます。
ふだんなら観ることのない映画にふれることができて、とても新鮮です。
1回目は、どうしても筋を追ってしまいがち。そこで考えました。
ネタバレ覚悟で、ネットであらすじを調べてから観ることにしました。
すると、ストーリーを解釈するための労力(?)が減ったぶん、
ワンシーンを味わう余裕が出てきたのです。
「誤読して思い込んで、勝手にゴッホになればいい。
ワンシーンをどれだけ味わうかが大切。」と中谷さん。
思い込みや妄想の世界を楽しむのが、映画鑑賞なのですね。
映画、テレビ、スポーツ――若いころは、共通の話題も豊富です。
ところが、歳とともに、共通の話題が見つけにくくなるのが現実。
でも、「共通の体験」は必要ないと中谷さんから学びました。
「語ることでも味わえるのが、名作。
僕は観るのも好きだけど、語るのも好き。
原点は、淀川長治さんの解説。浜村淳さんも。」と中谷さん。
観ていない人をも、映画の世界に引き込める情景描写。
ぜひ、中谷さんから習得したいですね。
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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美