月刊・中谷彰宏「月ナカ生活」

月刊・中谷彰宏195「恋愛は、一つではないことを学ぼう。」――『源氏物語・シーズン2』

政争に破れての謹慎生活。身内の不倫と部下の裏切り。
因果応報。やってきたことが我が身に降りかかる。
イケイケだった光源氏は、しだいに内省的になっていきます。
人間の真の価値とは何か――苦悩を深める光源氏。
「苦悩を通じて成長していく人が、主人公。」と中谷さん。
そう、源氏物語は人間の成長の物語なのです。
紫式部が源氏物語を通じて発したメッセージとは?
源氏物語の真髄を、中谷さんが解説してくれました。

  


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○「紫式部には、フォロワー数を取りにいった。」(中谷彰宏)

「紫式部は、下級貴族の出身。お勉強の家だった。
頭が良くて、美貌もあったが、女性だから出世はできない。
そこで、フォロワー数を取りにいった。
みんなが何を求めているか、考え抜いた。」と中谷さん。
古風と新しいタイプ、一途と移り気。権高と控えめ。
さまざまなタイプの女性を登場させて、
感情移入できる推しキャラを、物語に散りばめる技巧。
「源氏物語」で、紫式部の才能にふれましょう。

○「光源氏のモデルは、源融。」(中谷彰宏)

源融は、皇位継承権を持つ、嵯峨天皇の皇子でした。
「源融は権力欲が乏しかった。文芸が好き。
あの時代の権力闘争のぐちゃぐちゃが嫌になった。
政治をあえて捨てて、文化に行った。」と中谷さん。
権力闘争に破れて、須磨に流されていた光源氏。
その後、復権した光源氏ですが、心境には大きな変化が。
しだいに内省的になり、出家を志すに至ります。

○「シーズン2で、光源氏は報復されている。」(中谷彰宏)

源氏物語の第二部は、第一部とだいぶ趣を異にします。
人生の無常を覚り、出家を志す光源氏。
その引き金になったのが、妻・女三宮の不倫。
思いを寄せる柏木の子供を身ごもってしまったのです。
さらに、柏木は光源氏が長年引き立ててきた青年。
二重の裏切りにあった光源氏は、因果応報と受け止めます。
「シーズン2で、光源氏は報復されている。」と中谷さん
シーズン2の味わいどころは、光源氏の内的成熟なのです。

○「なれている男は、モテる。」(中谷彰宏)

第三部は、薫とライバル匂宮、そして浮舟の三角関係の物語。
薫は、光源氏の息子とされていましたが、じつは妻の不義の子。
その出自に悩み、また持ち前の中二病的資質で薫は迷走します。
「自省的な薫をよそに、匂宮はごんごん行く。
嫌われていても、なれている男がモテてしまう。
これは、不都合な真実。」と中谷さん。
浮舟の女心、男性にはわかりにくいかもしれませんね。

○「源氏物語は、ファスト教養書だった。」(中谷彰宏)

源氏物語は、教養なくしては読めないといいます。
また、教養を得るために、読んだともいいます。
「雲は、少女マンガでいうところの花。月はアイコン。
和歌、漢詩、年中行事。貴族生活パーフェクトガイド。
後の武士たちは、源氏物語で教養を補った。
ファスト教養、それが源氏物語だった。」と中谷さん。
教養、叡智、ノウハウ、美意識、そして価値軸。
紫式部は、平安時代の中谷さんだったのかもしれません。

○「恋愛が、仕事だった。」(中谷彰宏)

いまの私たちには想像つかないのは「血」。
血脈、家柄に対する意識は、私たちの想像が及びません。
「貴族にとっては、子孫繁栄が至上の価値。
だから、子を産むこと、つまり恋愛が仕事だった。」と中谷さん。
恋愛といえば、一種の娯楽、道楽というイメージの現代人。
でも、子をなし子孫の繁栄を至上命題とする人たちにすれば、
それは最も尊いいとなみだったと見ることができます。
源氏物語は、そういう意味で「ビジネス書」だったのです。
いつの時代も、仕事と恋愛は人間修行の両輪だったのですね。

○「源氏物語は、フランス映画。」(中谷彰宏)

「源氏物語は、展開が速い。1話でかなり進む。
責任を感じて入水自殺しようとした浮舟は、
その後、出家して尼寺に入る。
それを聴いた匂宮は、人をやって確かめると、
浮舟は「一尼でございます」。ふわっと、これで終わり。
長編ものには、変な完結はいらない。
源氏物語は、フランス映画。」と中谷さん。
源氏物語で味わうのも「余韻」だったのですね。