「源氏物語の読者は女性。少女マンガの原点。 平安貴族にかしずく宮廷の女性たちが読者層。 ゴシップをフィクションに仕立て上げた物語は、 お女中さんたちのオカズだった。」と中谷さん。 いつの時代もセレブのゴシップは、女性の楽しみ。 紫式部が描いた平安絵巻は、いまで言えばSNS。 宮廷の女性たちの日常に潤いを与えていたのですね。
「源氏物語は、3つのシーズンに分かれている。
シーズン1は、光源氏の青年時代。光源氏の絶頂期。」
亡き母の面影のある継母・藤壺。正妻・葵の上。
空蝉、夕顔、六条御息所、紫の上、朧月夜、明石の君。
一時は、政争に破れ都落ちすることがありながらも、
光源氏の栄華は絶頂を極めて、シーズン1は幕間。
でも、ここからが源氏物語の本領発揮。
光源氏の人生に味わいと深みが増してゆきます。
正妻・紫の上が亡くなると、光源氏の人生に陰りが。
つぎに正妻として迎えたのが女三の宮。
彼女は、柏木という青年と密通し、子供を宿すことに。
この事件を通じて、光源氏は自分の過ちを省みるようになります。
過ちとは、継母・藤壺との密通して、子をなしたこと。
「サレた側の気持ちがわかることで、精神的に成長していく。
光源氏は、じっさいは狂言回しだった。」と中谷さん。
多種多様な女心が、源氏物語の「主人公」だったのですね。
「少年マンガは友情、努力、勝利を描く。
少女マンガは「努力」ではなく「運」を描く。
王子様がシンデレラを見出したように、
宗像コーチが、岡ひろみを見出した。」と中谷さん。
帝に見初められて、一躍セレブになる平安女御もいました。
家柄が低くても、運次第で人生は拓かれる。
源氏物語の魅力は、平安ドリームにあるのですね。
気位の高い六条御息所から、気持ちが冷め始めた光源氏は、
癒し系の夕顔へ足繁く通うようになります。
やがて訪れた夕顔の死は、六条御息所の生霊を思わせます。
さらには、懐妊した正妻・葵の上にも生霊として取り憑く。
「大好きさが、怨霊になっていく。生霊となって取り憑く。
恋愛一途の人が、怨霊になる。嫉妬深い女に突然変わる。
思い詰めたヤンデレタイプ、それが六条御息所。」と中谷さん。
一途の人には一途、これが人間関係の原則なのですね。
光源氏になびかなかった唯一の女性、それが朝顔でした。
「一言、憎しなども、人づてならでのたまわせんを、
思い絶ゆるふしにもせん」とは、光源氏のつらい胸の内。
一言「嫌い」と直接言ってもらえたら、諦められるのに。
「恋愛は、失敗を通じて、学習していく。向上心のきっかけ。
ふられた体験で、耐性をつけていこう。」と中谷さん。
ふれら体験は経験値。恥じるものではないのですね。
「この時代の女性は、顔を見られることを恥とした。
ちぎった翌朝、顔を見てびっくり、ということもあった。
だけど、光源氏は、チェンジしなかった。
声、歌、字、香り、髪、そして床上手。
光源氏は、教養を見て恋愛をした。」と中谷さん。
恋愛は、ルックスではなく、相手の人間性全体。
光源氏のモテは、そんな人間観に裏打ちされているのです。