月刊・中谷彰宏「月ナカ生活」

月刊・中谷彰宏191「雷に打たれるような恋をしよう。」――『江戸川乱歩』『瀬戸内寂聴』

同時代においては、キワモノ扱いされた2人の作家。
1人は、江戸川乱歩。もう1人は、瀬戸内寂聴。
2人に共通していること、それは「無我夢中」。
推理小説マニアの乱歩は、古今東西の文献を研究。
やがて「空白地帯」があることを発見しました。
それを埋めるのが使命とばかりに執筆に邁進しました。
瀬戸内寂聴は夫の教え子との不倫。そして子を残しての離婚。
その後も三角関係。さらには妻子ある井上光晴との恋愛。
「傷口から流れ出た血で小説を書く。」と中谷さん。
無我夢中に生きるための心構え、中谷さんに伺いました。

  


価格やご注文方法などをご案内しています。

○「好奇心はスタート。探究心で掘り続ける。」(中谷彰宏)

江戸川乱歩といえば、日本推理小説の先駆者。
怪人二十面相シリーズをはじめ、数々の名作を残しました。
「江戸川乱歩は、オタク。古今東西の推理小説を調べた。
すると、空白地帯を発見した。それを埋めるために書いた。
感じのいいオタクは、押しつけがない。自分で行動する。
好奇心はスタート。そこから探究心で掘り続ける。」
オタク的探究心は、継続の原動力なのですね。

○「江戸川乱歩自身が、怪人二十面相だった。」(中谷彰宏)

乱歩の作家人生は恵まれたものではありませんでした。
芸術的品位のない通俗小説として扱われるばかり。
でも乱歩は根気強く、探究し続けました。
「好きな仕事を探すのではなく、今の仕事を好きになる。
江戸川乱歩は、転職15回、引っ越し32回。
ラーメン屋台を引いたこともあった。まさに怪人二十面相。」
私たちも「二十面相」で、粘り強く探究し続けたいですね。

○「乱歩文学は世界観。トリックでも、筋でもない。」(中谷彰宏)

「明智小五郎は洋行帰りのバタ臭い紳士。高等遊民。
シャーロック・ホームズはアスペ。シンキングマシーン。
明智小五郎は感情を持っている。愛を感じる。」と中谷さん。
怪奇、幻想、エログロ――乱歩作品の独特の世界。
「乱歩文学は世界観。トリックでも、筋でもない。」
筋を大掴みできればいいと、早見する方が増えていますが、
世界観を味わうには、やはり「1倍速」ですね。

○「読者は、創作の一部を担っている。」(中谷彰宏)

江戸川乱歩文学を引き継いだのが松本清張。
「松本清張は、サラリーマンの悲劇を描いた。
誰が小説をつくるのか、それは作者、登場人物、そして読者。
読者がストーリーを展開し、作者が水をかけることもある。
読者は、創作の一部を担っている。」と中谷さん。
作品を前に、読者が自分の想像や妄想を膨らませてゆく。
これが、芸術を前にしたときの礼儀なのですね。

○「芸術というものは、ゾッとしないとダメ。」(中谷彰宏)

もう一人の「怪人」、それは瀬戸内寂聴。
9歳でモーパッサンやトルストイにはまり、20歳で結婚。
26歳で、4歳の娘を置いて、夫の教え子と駆け落ち。
35歳でデビューするも、評価ははかばかしくなく…
その後、複雑な恋愛関係を送りつつも、
しだいに作家として認められるようになりました。
44歳のときに、「全身小説家」井上光晴と恋愛。
「芸術というものは、ゾッとしないとダメ。」と中谷さん。
寂聴さんの人生は、まさに芸術そのものですね。

○「恋愛することが、人生で一番成長できる。」(中谷彰宏)

井上光晴が「全身小説家」なら、寂聴さんは「全身恋愛家」。
井上に対する未練に耐えられないという理由で出家。
「キモいと言われることに、慣れることで強くなる。
傷口から流れ出た血で小説を書く。書いて乗り越える。
恋愛することが、人生で一番成長できる。」と中谷さん。
恋愛には、傷つくことはつきもの。
それでも恋愛する人が、成長し続けるのですね。

○「違う切り口。同じ切り口では、慰め。」(中谷彰宏)

瀬戸内寂聴さんの人生相談は、評判をよびました。
「尼さんになりたい人には「おやめさい。儲からないから(笑)」
ヤク中の夫と別れられないと悩む女性には、一緒にいてください。
一人ひとり、違う切り口。同じ切り口では、慰め。」と中谷さん。
思いがけない切り口が示されると、こわばった心がほぐれます。
問題解決ではなく、相手のこわばった心をほぐす。
これが、恋愛修行から得た、寂聴さんの物腰なのですね。

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