料理を前にしての会話は「力量」が如実に表れます。
「おいしいしか言えない。甘すぎなくていいですよね。
これでは、会話が止まってしまう。
料理の由来や物語を知っていれば、会話は盛り上がる。」と中谷さん。
ショートケーキの「ショート」の由来。
ビクトリア女王とスイスロールの物語。
こんな知識があると、味わいが一段と深まりますね。
「千枚の葉っぱという意味で言えば、ミルフイユが正しい。
フィーユとは女の子。ミルフィーユでは、千人の娘さん。
多くの女の子に大人気というのも、面白いけど。」と中谷さん。
イチゴが帽子に似ていることが由来ともいわれるナポレオン。
明治初期に発売されたときは、サクランボだったそうです。
でも、サクランボは季節限定。通年商品にするために、
イチゴに変更したのだそうです。
食べ方の難しいミルフイユ、横倒しはセーフですが、
剥がすのはアウトなのだそうです。注意したいですね。
「あるとき、そば粉でつくったお粥をこぼしてしまった。
太陽で焼けた石の上だったので、固まってしまった。
これがガレット。料理は、失敗から生まれる。」と中谷さん。
コーンフレーク、チョコチップクッキー、ウスターソース、
ポテトチップス、アイスキャンディー、さらには柿の種。
これらは、いずれも失敗の産物。
失敗を失敗で終わらせないためには、とりあえず味わうこと。
その勇気から、新しい味わいが生まれるのです。
素朴な郷土料理だったガレットが、ついに宮廷デビュー。
ブルボン朝の貴族たちが、ガレットを進化させていきました。
「そば粉を小麦粉に変えた。牛乳、卵、バター。
さらに、砂糖も入れてよ、ということになった。
これがクレープ。1976年に、日本に上陸。
生クリームをのせて、世界中を驚かせた。」と中谷さん。
さまざまな工夫が、料理を進化せていくのですね。
「パンは2回焼くと、保存性が上がる。
だから、ビスケットはイギリス海軍の兵糧だった。
小腹がすいたから、おやつで食べるようなものではなく、
がっちりカロリーを補給するために食べた。」と中谷さん。
ちなみに、ビスケットとクッキーの違いは、糖分・油分の度合い。
40%以上がクッキー、以下がビスケットということですが、
世界的に混同されているのが実情のようです。
「フォーチュンクッキーの原型は、金沢の辻占煎餅。
文字通り、占いの紙が入っている煎餅のこと。
1894年の国際見本市に向けて造られた日本庭園。
これを設計した萩原眞が、訪れた人たちに出したお茶請け。
これが、アメリカ全土に広がった。」と中谷さん。
その後、第二次大戦時の日系人排斥を受けて、
中国人のレストランで供されるようになったそうです。
お菓子の来歴から、歴史を学びましょう。
バウムクーヘンは、ドイツの田舎のお菓子の一つでした。
第一次大戦後、捕虜として日本に連行されたカール・ユーハイム。
解放後も日本に留まることを決意し、家族も呼び寄せました。
横浜で「E・ユーハイム」を開店して、繁盛させます。
ところが、そこに関東大震災。全財産を消失してしまいます。
「お菓子は、平和な時代に食べられるもの。
カール・ユーハイムは、くじけない。根性がある。
神戸に移って再起を果たした。」と中谷さん。
こんな物語一つで、お菓子の味わいが変わってきますね。
**