今回の月ナカは、「桃太郎」から歴史を読み解きます。
「桃太郎の持っている幟、ここには日本一と書いてある。
でも、桃太郎の昔話の時代に「日本」という概念はなかった。
鬼は、ウラという製鉄技術を持った渡来人。
金棒は、鉄の象徴。当時の最新兵器だった。
ウラを倒したのが、吉備津彦命。これが桃太郎のモデル。」
「歴史」としての桃太郎に、何が見えてくるのでしょうか。
きび団子は当初、四角い形をした、かき餅だったそうです。
それが今日のきび団子になるまでには、物語がありました。
「岡山藩の重臣に伊木三猿斎という茶人がいて、
彼が『せっかくだから、黍を入れたら』と提案した。
さらに、他の茶人たちも『丸いのが面白いんじゃない』。
茶人たちが意見を出し合って、今のきび団子になった。
茶人は、マルチクリエイター。」と中谷さん。
茶人の発想力が、名物を生み出したのですね。
日の本にふたつとあらぬ吉備団子 むべあじわいに名をえしや是
明治天皇の御製で、お墨付きを得たきび団子は、
日清・日露戦争を通じて全国的に有名になりました。
広島に復員した兵隊たちを待ち受けたのは「桃太郎」。
きび団子の廣榮堂の主人・武田浅次郎は、
桃太郎の装束で出迎えました。背には、あの幟。
そう、桃太郎のビジュアルは、ここに誕生したのです。
「武田浅次郎は、一人電通だった。」と中谷さん。
才覚ある人の行動力が、歴史をつくるのですね。
保存技術の向上は、人々の食生活を豊かにしてきました。
その一方で、賞味期限を短くしておくのもサービス。
「昔は、日持ちするというのが、よいとされていた。
でも、今は日持ちしないほうが、価値がある。」と中谷さん。
伊勢参拝のお土産の定番・赤福の賞味期限は2~3日です。
だから、お土産にもらったら、すぐ食べます。
だから、お土産をもらったという感動も鮮明。
日持ちしないことで、感動が深まるのですね。
「かき氷の幟旗は、波に千鳥、そして青い波。
東海道五十三次には、この幟旗が出てこない。」と中谷さん。
続いて、中谷さんが興味を持ったのは、氷の幟旗。
「枕草子に、削り氷が出てくる。平安貴族は、氷を召し上がった。
江戸時代の加賀藩は、6月1日を氷の節句として、将軍に献上した。」
上流階級のものだった氷は、しだいに庶民へと広がっていきます。
後半は、起業家たちの奮闘努力の結晶・氷をめぐる物語です。
幕末、鎖国が解かれ、欧米との交流が始まりました。
「日本で最初にアイスクリームを食べたのは、勝海舟と福沢諭吉。
咸臨丸が太平洋を横断して、アメリカに到達したときのこと。」
乳製品を日本人が食べるようになったこは、ちょうどこの時期。
江戸時代、人々は、牛肉を食べることはありませんでした。
商人・中川嘉兵衛は、駐日大使のオールコックのコックでした。
彼は大使から、これから牛鍋屋が流行ると勧められ、明治元年開業。
新しいビジネスのタネは、開国という大変革から生まれたのでした。
「医療には氷が必要。氷が儲かるよ」とお抱え外国人のヘボン。
持ちかけられた中川嘉兵衛は、さっそく氷ビジネスに参入。
「富士、諏訪、釜石、秋田 青森と天然氷を探して回ったけど、
ぜんぶ失敗。ようやく函館の五稜郭で有望な氷を発見した。
だけど、売れない。腹が冷えることを当時の人は嫌った。」
しかし、中川嘉兵衛創業の「横浜氷会社」は、いまのニチレイ。
氷起業家たちから、不撓不屈の精神を学びましょう。
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