月刊・中谷彰宏「月ナカ生活」

「奈良」は「習(なら)」。

天才・森川杜園に学ぶ、超上達「素直」作法。

月刊・中谷彰宏180「素直さは、技工に勝る。」――奈良

上達するかしないかを決定づけるのは「素直さ」。
奈良一刀彫の中興の祖・森川杜園。
彫刻家でありながら同時に、絵師であり狂言師。
三刀流を体得し、みごとな作品を後世に残しました。
そんな「天才」でありながら、杜園はとても謙虚で素直。
助言者の言葉に耳を傾け、すぐに行動に移す。
世の評価を受けるようになっても、礼儀礼節は忘れない。
杜園の習い上手に、隠されていたのは「奈良」。
奈良は、習い事の一大文明圏だったのです。
三刀流人生を生きる心得、中谷さんから伺いました。

ゲスト:奈良巧さん(編集者)

【単品】月刊・中谷彰宏180

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○「大阪は必死。奈良は、余裕綽々。」(中谷彰宏)

今回は、奈良を舞台に活躍した彫刻家の物語です。 奈良といえば、京都・大阪とならぶ歴史のまち。 でも、どこか京都・大阪とは異なるムードがあります。 「上から見下しているのが京都民。大阪人は必死。 奈良は余裕綽々。大仏はんがいてはるから、大丈夫。」 京都への遷都も、東京への遷都もおかまいなし。 「奈良」から見えてくるものは「余裕」なのでした。

○「京都はお香。大阪は昆布だし。奈良は墨。」(中谷彰宏)

「月ナカ177」のテーマは「におい」でした。
三都の「におい」について、中谷さんの観察は以下の通り。
「京都は鐘の音。奈良は、チーンというお輪。
京都は行灯、奈良は灯籠。京都は坪庭、奈良は廊下。
京都はお香、奈良は墨の香り。大阪は昆布だし。
最近の大阪は、デミグラスソースかな。」
マスクが外せないご時世ですが、それだけに、
においには、敏感でありたいですね。

○「本物に似ているだけでは、絵とはいえない。」(中谷彰宏)

森川杜園は、19世紀に活躍した「三刀流」芸術家。
奈良出身の杜園は、鹿の絵で知られた内藤淇園から絵を学び、
あわせて狂言を修得し、大蔵流狂言師の名手にもなります。
「お手本を真似していては、それまで。実物を観るな。
師匠の内藤淇園は、そう指導した。西洋の画法とは逆。
本物に似ているだけでは、絵ではない。形から抜け出せ。
タモリさんのモノマネは、本物を超えているから似ている。」と中谷さん。
「観ない」ことで、本物を超えることができるのですね。

○「素直さは、技工に勝る。」(中谷彰宏)

若き日の森川杜園が教えを請うたのが、江戸っ子・柴田是真。
是真は漆工芸の達人として、すでに名を知られていました。
「やめときな。絵描きは、京都にかなわねえよ。
絵は粉本次第。いい粉本は、京都にあるんだ。
100年がんばってもだめだよ。
なんで、奈良のもんやらねえんだよ。なんかあるだろ」
是真の問いかけで、杜園は一刀彫を再発見しました。
「あんじゃねえか。おめえ、それやんな。がんばんなよ」
杜園は是真のアドバイスをしっかり受け止めました。
「素直さは、技工に勝る。」と中谷さん。
テクニックよりマインドということなのですね。

○「お能はミニマルアート。動きを小さくして、内面を伝える。」(中谷彰宏)

「三刀流」の芸術家・森川杜園の3つ目の顔は、狂言師。
「お能は、ミニマルアート。感情や動きを小さくすることで内面を伝える。
狂言はコント。ひたすら表現をデフォルメして、あるある感を出す。
お能は、敗れていった者が主人公。勝者によるレクイエム。
杜園は、狂言で培った観察力を、人形彫で活かした。」と中谷さん。
一芸探求が尊ばれてきましたが、「二刀流」大谷選手の登場で一変。
二芸、三芸で発揮される才能の開花ももあるのですね。

○「芸術家は、個性を出そうとする。だけど、杜園は違った。」(中谷彰宏)

町田久成は明治時代の官僚。東京国立博物館の初代館長です。
廃仏毀釈の時代、仏教芸術の危機を救った人物として知られています。
当時、正倉院御物の模写を森川杜園に依頼したのが、町田でした。
「町田久成はびっくりした。蜘蛛の糞まで完全に模写していた。
芸術家は、個性を出そうとする。だけど、杜園は違った。
屏風に描いた鹿を見た雄鹿が突進したという話もある。」と中谷さん。
完璧な模写に徹した杜園、没個性に個性が現れるのですね。

○「奈良の気迫。生み出す土壌が存在する。」(中谷彰宏)

森川杜園の人生を通じて、見えてくる「奈良」のすごみ。
「柴田是真はびっくりした。なんだよ、このまちはよ。
誰もが能、鼓、茶道、和歌。江戸じゃ考えられねえよ。
人口あたりの習い事率の1位は奈良。
これが奈良の気迫。文化を生み出す土壌。」と中谷さん。
「奈良」「なら」「習」――奈良の語源は「習」なのかも。
奈良の分厚い「習い事」文化が杜園を生んだのですね。

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月ナカ生活 コーディネーター・曽我清美