中谷さんのメッセージの本質、それは「余裕」の獲得。
精神的余裕、経済的余裕、時間的余裕。
多くを求めるわけではないけれど、不足して困ることのない状態。
それが「余裕」。では、どうすれば、余裕は体得できるのでしょうか。
それは「詩人」からの学び。詩人の奏でる言葉の力と生き様です。
今回登場するのは北原白秋とポール・ヴェルレーヌ。
いずれも著名な詩人ですが、その私生活は「むちゃくちゃ」。
でも、自分の人生を達観し、ときには笑い飛ばしてしまう。
そんな「余裕」を私たちに見せてくれます。
詩と詩人、そのギャップから学べることは少なくありません。
「余裕」を獲得する技法、中谷さんから学びました。
★こんな方にお奨めです♪
□余裕のない方。
□詩人の本質にふれたい方。
□自分の短所がいやな方。
今回のテーマは「詩人」。詩人の生き方から学びます。
北原白秋は長身で男前。それでいて、童心を持っていました。
女性にやさしいからモテモテ。女性ファンが殺到しました。
「隣家の人妻と駆け落ちして、姦通罪で逮捕。二人で裁判を受けた。
編笠をすこしかたむけよき君はなほ紅き花に見入るなりけり
これがそのときの心境。白秋、余裕でしょ。
『物語』に入るタイプの人生は、波乱万丈になる。」と中谷さん。
その後も、女性たちとの浮名を流しながらの詩作。
波乱万丈に、詩のヒントを見出していたのでしょうね。
貧窮生活に陥った白秋ですが、それでもロマンチスト。
わずかなお米を雀にほどこしたところ、なんと「雀の恩返し」が。
詩集「雀の生活」が大ヒットして、復活を遂げたのです。
その後も、「からたちの花」「この道」「ペチカ」。
山田耕筰とのコンビで童謡のヒットを連発します。
ところが、病を発症。視力が衰えてしまいます。
それでも、奥さんの口述筆記で、数々の詩作を成し遂げます。
病気になって、新しい境地に到達した白秋、
芸術家は「生きる」ことが「作品」なのですね。
「真実、二人はやるせなし、真実、一人は堪えがたし」
「薔薇ノ木ニ薔薇ノ花サク。ナニゴトノ不思議ナケレド」
一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか、
これも白秋の手になるもの。
「コピーを感じる。白秋は、コピーライターだった。」と中谷さん。
「自分の弱さを知った時、人は強くなる」
「苦悩を隠さない。苦悩が自分を光らせてくれる」
「美しいものをみたとき、人は反省する」
味わい深い北原白秋の言葉、胸にしみわたりますね。
ポール・ヴェルレーヌは、19世紀後半のフランスを代表する詩人です。
ボードレールとともに語られる巨人のヴェルレーヌですが、
実生活者としては完全に破綻していたあたりが、中谷さん好み。
「ヴェルレーヌが愛したものは、酒、女、そして神。
飲む買う、祈る。背徳と悔恨がテーマ。
やっちゃいけないことやる。そしてそして神様に懺悔する。
デカダンスの教祖として、若者が憧れた。」と中谷さん。
この振れ幅が、私たちに「余裕」をもたらしてくれるのですね。
市役所職員だったヴェルレーヌ、22歳でマチルドと結婚します。
ところが翌年、カミングアウトして、ランボーと同棲を開始。
28歳で、ランボーと痴話喧嘩。銃撃して投獄されてしまいます。
出獄後、ランボーと再会するやいなや、またバトル……
その後の人生もめちゃくちゃのヴェルレーヌ。
「不協和音な人生の終わり方が、いかにもフランス映画的。
詩のために人生がある。人生のほうが詩よりもより芸術的。
詩人とは、本来そういうもの。」と中谷さん。
「不協和音」に悩む方、ぜひヴェルレーヌの詩を音読しましょう。
「駿台予備校時代、先生たちの和訳の違いを味わった。
たとえば『セックス』。伊藤先生は、そのままセックスと訳す。
奥井先生は『こう訳しておこうか、あの夜のおたのしみ。
テストでは、伊藤くんの訳で書きなさいよ』。
佐久間先生は『やったのか』と映画字幕の訳だった。
奥井先生のは翻訳小説。伊藤先生のは受験。しびれたね。」
訳者によって、味わいがまったく違ってくるのですね。
「中谷さんの会話は即興。ジャズ。」と西岡文彦先生。
「中谷さんは短冊作家。1つのことを1000通りに言い換えている」
これは藤原和博さんの言葉。翻訳とリズム、まさに詩の世界。
「声に出して読めば、解釈がかわる。メロディーとリズムが生まれる。
いいことも、よくないことも面白がっていく人がアーティスト。
ジャズな生き方、詩人な生き方ができる。」と中谷さん。
ジャズな会話と詩な表現、そしてジャズな人や詩人の生き方。
これが中谷さんの生き様だったのですね。
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