芸術作品は、どのように鑑賞すればいいのでしょうか。
数多くみれば、しだいに目が肥えてくることはたしかです。
でも、中谷さんは、芸術家をめぐる物語にふれることを提唱します。
ルブランがマリ・アントワネットに出会うまでの物語。
失われる名建築を残そうとした谷口吉郎と明治村の物語。
ピカソとマティス。二人のライバル関係と相互リスペクトの物語。
「物語」を通じて、力まずに芸術作品を味わってみませんか。
人物ドラマを通じて、芸術を鑑賞する方法、中谷さんから教わりました。
★こんな方にお奨めです♪
□芸術をどのように鑑賞すべきか知りたい方。
□芸術家をめぐる人間ドラマに興味のある方。
□「正しさ」にこだわってしまう方。
芸術鑑賞というと、見たあと、論評をしなければならない。
そんな気持ちにさせられますが、そうではないようです。
「知っているものを見に行くのは『確認』。体験ではない。
1ミリでもいいから、観る前と後で変化が欲しい。
展覧会は、自分自身を変えに行く場所。」と中谷さん。
作品の「評価」ではなく、自分自身の「変化」。
美術館に出かけて、自分を進化させていきましょう。
いま、画像の修正アプリは、すごいようですね。
もはや、「別人」の域まで、加工することができるそうです。
「お抱えの絵師は、盛りすぎた。その点、ルブランは女性。
マリ・アントワネットの内面を描こうとした。
加工して自分好みにするのは、愛がない。
本当の愛とは、リアリズム。」と中谷さん。
生身の人間の内面に光を当てられるのが、愛なのですね。
抽象絵画やシュールレアリズム絵画には、好みが出ます。
「大好き!」という人もいれば、「粗大ごみ」にしか見えない人も(笑)。
でも、両極端に触れやすいからこそ、第一印象で終えたくはありません。
「落とし所を見つけたり、折り合いがつけたりするには、
グラデーションが必要。そのためには、たくさんみること。
ゼロか100では、社会でも通用しない。」と中谷さん。
経験値を増やすことで、微調整が可能になるのですね。
長い行列に並び、それなりの料金を支払って、対面した名画。
食い入るように必死にみてしまう。その気持ちもわかります。
でも、中谷さんは、こうおっしゃいます。
「全体をぼんやりみよう。必死にみると見落としてしまう。
よさがわからないからと焦らない。そんな余裕が欲しい。」
損保ジャパン日本興亜美術館にあるゴッホの「ひまわり」。
この絵、遠くからぼんやりみると、ゴッホの自画像に見える。
そう中谷さんがおっしゃっていましたよ。皆さんも、ぜひ!
「絵のよさ」をわかろうとするのは「正解」志向。
中谷さんは、つぎのように指摘します。
「良い悪いは、高い安いと同じように、他者の基準。
『自分、こういうのに弱いんだよね』と自分を眺めてみる。
自分独自のストライクゾーンを知るのが、メタ認知。」
世間的な評判や評価にとらわれずに、自分の好みで接する。
自分の価値軸を確立することで、深い絵画体験ができるのですね。
一人の恋人の出現で、ピカソは作風を一変させました。
「青の時代」から「バラ色の時代」といわれる展開がそれです。
「青というと、日本人にとってはブルー。精神的にへこんだイメージ。
だけど、キリスト教世界では、青はマリア様のケープの色。
高貴を意味する。赤はキリストの血の色というのが約束事。
スーパーマンが青と赤なのも、そういう意味。」と中谷さん。
その「青」でサーカスの団員を青で描いて、世の中に衝撃を与えた。
それがピカソの本領発揮ということなのですね。勉強になりました。
「覚悟が絵に表れる。まっとうな生き方を捨てたという覚悟。
絵を鑑賞するために、芸術家の物語に没頭しよう。」と中谷さん。
ルブランがマリ・アントワネットに出会うまでの物語。
失われる名建築を残そうとした谷口吉郎と明治村の物語。
ピカソとマティス。二人のライバル関係と相互リスペクトの物語。
こんな「物語」にふれることで、力まずに芸術作品に向き合えるのです。
人物ドラマを通じて、芸術を鑑賞してみませんか。
**