今回ご紹介の「大脱走」は、戦闘シーンのない戦争映画。 「僕の人生のテーマは、漂流と脱走。 何があっても、へこたれない不屈の男たち。」と中谷さん。 脱走の常習犯ばかり集められた、ドイツの捕虜収容所。 一癖も二癖もある、脱走職人たちは油断も隙もありません。 へこたれない男たちの物語をご堪能ください。
この映画で意外だったことは、捕虜たちの暮らしぶり。 スポーツをしたり、農作業をしたり、さらにはお祭りまで。 信じられないくらいの自由さに驚かされました。 中谷さんは、次のような指摘をされています。 「敵であっても、将校同士敬意をはらっている。 だから捕虜になっても、貴族的にふるまわないといけない。」 極限状況下だからこそ、双方に紳士性が試されるのですね。
ビッグXの指揮の元、進められている大脱走計画。
調達屋、トンネル屋、製造屋、情報屋、測量屋。
脱走後、街に溶け込む衣類を作る洋服屋。
そして、身分証を偽造する偽造屋まで。
250人で脱走を計画していると聞いた独房王・ヒルツは苦笑。
「そいつは、おもしれえ」と、一肌脱ぐことになりました。
「変わった計画には、変わった任務が必要。」と中谷さん。
スティーブ・マックイーン扮するヒルツならではの任務とは?
「『大脱走』は、職人たちの物語。癖のあるプロの物語。
ベースには、職人に対するリスペクトがある。」と中谷さん。
50人という犠牲者を出して、脱走は、結局失敗に終わりました。
ヒルツも捕まり、グローブとボールを手にして、ふたたび独房に。
「あいつら、自由でいいなあ。あんな生き方をしたい。
と、ドイツ兵がうらやましがっている。脱走する人は、自由。」と中谷さん。
自由とは何か、これが映画「大脱走」のテーマだったのですね。
2本目の映画は、スパイ映画「キングスマン」。
「007はウェットスーツ脱ぐとタキシード。
スパイは、お洒落じゃないといけない。
もう一つは、ユーモア。ユーモアは、紳士の条件。
スパイはピンチの連続。あたふたしない余裕も必要。
お洒落という美学がスパイ映画で学べる。」と中谷さん。
キングスマンのアジトは、なんとテーラー。
お洒落美学がぎっしり詰まった映画です。
パブで、チンピラに囲まれたキングスマン・ハリー。
「ハリーはまず、傘でドアの鍵をかけた。
これは、他のお客さんの迷惑にならないようにという配慮。
このとき背中を見せた。手を上げても、背中にシワ一つない。
これは良いスーツであることの証明。厳しい美学。」と中谷さん。
これは「お約束のカット」ということですが、初耳でした。
お洒落視点を備えると、映画の観方がより深まりますね。
世界の平和のために戦うスパイ組織、キングスマン。
上流階級でなければならないと考える上層部に対して、
ハリーは「マナーは後天的。教えればいいんです。
可能性ある若者を育てましょう」と反論しました。
「マナーズ・メイクス・マン。複数形なのにSがつくって変でしょ。
ここでいう「メイクス」は古語。sでなくthの発音。」と中谷さん。
こんな小さなことに意識が向いているとは、心底驚きました。
この域に達するために、別ナカ修行を積みたいですね。
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