1本目の映画は「シン・ゴジラ」です。
この映画のキャッチコピーは「現実対虚構」。
「現実」には「にほん」とルビがふられています。
「ファンタジーはゴジラだけ。ほかはすべてリアル。
全部SFだと面白くない。感情移入できない。
シン・ゴジラの見所は、日本のお役所仕事。」と中谷さん。
危機に直面したときの日本政府のリアルをぜひ。
ゴジラによって、日本人は追い込まれていきました。
政府が招聘した3人の学者が示した指針の一つに、
「何もせず、運命をともにする」というのがありました。
「死ぬという選択肢が生まれて、
初めて生き延びるという決意が生まれる。
ゴジラは、想定外の象徴。
想定外に備えなければ、敵には勝てない。」と中谷さん。
勝つためには、想定外への想像力で対処するのですね。
「ゴジラは、移動しているだけ。
反撃はするけど、基本的に歩いているだけ。
人間が勝手にパニックになり、攻撃しようとしている。
ゴジラではなく、人間の生き方が問われている。
ゴジラは、SDGs。」と中谷さん。
コロナにしても同様、危機で問われるのが人間です。
危機は、持続可能な社会を創るための試金石なのですね。
2本目の映画は「ティファニーで朝食を」です。
「タイトルは、世界一有名。でも、内容は誰も知らない。
朝もやのニューヨーク五番街。開店前のティファニー。
ショーウィンドウを覗き込みながら、ドーナツをかじり、
コーヒーをすするという有名なオープニング。
当初はリムジンだったが、タクシーに変更された。」
ティファニーで「朝食」を、ここから物語が始まります。
主人公・ホリーに扮するのは、オードリー・ヘップバーン。
「寝ぼけ眼のホリーはアイマスクに、イカ胸のシャツ。
高級売春婦を意味している。これも、映画的表現。
最初は、マリリン・モンローの予定だった。
たばこスパスパ、お酒ガブガブ。それでも品がある。
品がある女性でなければ、映画が汚らしくなる。」と中谷さん。
ホリーは、今でいえばパパ活で生計を立てる18歳。
オードリーだからこそ、演じきれるキャラクターですね。
物語は進み、作家・ポールとの親交が深まるホリー。
ふたりは10ドルを携えて、ティファニーに買い物に。
しかし、10ドルで買えるようなものはほとんどありません。
「クラッカーのおまけの指輪に刻印してもらった。
融通がきくのが、ティファニー。」と中谷さん。
ホリーはその後、融通がきかない図書館司書に呆れ顔。
でも、無縁だった本にふれるようになったホリー。
ホリーの成熟が、本を通じて描かれています。
ポール「束縛と愛は、ぜんぜん違うよ。 君は、人生を真っ向から受け止める勇気がないんだ。 閉じ込められることがいやだと言ったけど、 自分を檻に閉じ込めているだけだ」 自分は「名無しの野良猫」というホリー。 価値観、感性はまるで相容れない二人、 それでも惹かれあっていく、不条理の物語です。
**